「うちから深町公園ならバスが通っている。バス代は当然だろう」

「野原さん自転車持ってたじゃない。深町公園なら手頃な距離よ。メタボの解消にもなるし。オーケイね」

一方的に電話はきられた。畜生、俺はスマートが売りなんだ。メタボなんか縁遠いわ。私は受話器に毒づいた。しかし、明日からの仕事が入ったのだ。それも十日間とは有難い。私は準備にかかった。仕事の内容は不明だが、場所が公園だ。当然野外業務だろう。寒さの対策をたてておかないと野外の業務は怖い。着込んでいくのと別にセーターを一枚、使い捨てカイロを十個、タオルを三枚、靴下を一足、梅ぼし飴を一缶、リュックサックに入れる。準備オーケーだ。

第一日。出かける前にもう一度所持品を点検した。作業用の外套はリュックサックに入らないので、上に着ていくことにした。この時期、少しでも北風が吹いたなら、とても外套なしではいられない。

私の住居から深町公園まで普通に走って二十分くらいと見た。八時二十五分に自転車をスタートさせる。道筋を確めつつ走って、予定通り八時四十五分に現地に着いた。

この公園は平成になって役所が造ったもので、単純な長方形をしている。国道に面した長い方を正面と見て、後方は向かって右側に三棟の公団住宅、それに連なって公園に背を向けて何棟かの建物が並んでいる。国道に面した右の端にコンクリートの門らしい柱が二本立っていて、公園の名前が記してある。

ずっと離れた左側の端にも同様の入口があり、その間は波形の鉄柵が連なっている。この形の鉄柵が四方を囲んでおり、見通しのよい公園となっている。それとここは樹木が少ない。鉄柵に沿ってまばらに灌木が植えてあるだけだ。長方形の短い面、つまり公園の左右は共に奥へのびる道路で、住宅街へ通っている。

国道を左へ二キロメートル程行くと大きな十字路にぶつかる。右へ四、五十メートルほど行くと鉄道の駅だ。左へ一キロメートルの右側に役所がある。十字路を通過するとすぐに大型のスーパー・マーケットが右側に、向かい合って左側に家電の量販店、外食チェーン店が二店並んでいて、その先に店舗や倉庫などが点在している。

公園の中は大きく三ブロックに分かれている。向かって左側のエリアには主として木製の遊具が設置されており、中央のエリアには金属製の遊具が点在する。向かって右側のエリアは門柱のあるところで、入ってすぐに公衆便所があり、ベンチが三台、奥へ向かって縦長に置かれている。

ベンチは他に、公園の奥の灌木の前に、遊具の方を向いて十台ほど置かれている。下はほとんどが小石まじりの土で、緑は無い。それでもコンクリートではないだけよしとするべきだろう。