お盆の看取(みと)り

2019年のお盆の時期に、私たちの患者さんが1人亡くなり、その方のお看取りをしました。

この時期に高齢者の患者で亡くなる方がいると、私は、

「ああ、きっとあの世から家族や友達がお迎えに来たんだねえ」

と思い、センチメンタルな気持ちになります。

日本では、亡くなった魂がお盆にこの世に帰って来るという信仰があり、各地で先祖の霊を祀まつるためのいろいろな行事があります。

私は、京都に学生時代から10年以上住んだことがあり、毎年8月16日の五山の送り火を楽しみにしていました。ただし、死者の魂うんぬんという意味合いでは意識せず、単なる年中行事または観光行事として楽しんでいました。

今回、インターネットで調べてみると、お盆の始まりの8月13日には迎え火を焚いて死者の魂をこの世に迎え入れ、16日には送り火や精霊流しであの世に送るそうです。

実は日本だけではなく、中国や韓国でも、夏に同じような行事があるようです。また、世界的にも、ディズニー映画『リメンバー・ミー』で有名になったように、メキシコにも「死者の日」というのがあって、その日には亡くなった先祖がこの世に帰って来るということです。

さて、一般的な社会生活を送っていると、普段は死というものをあまり意識せずに生活しています。「生と死」というのは相反する現象で、その間には厳然たる壁のようなものが存在しているようです。

ところが、年老いて次第に弱っていき、老衰や慢性疾患などで亡くなっていく過程では、この世とあの世の違いがそれほど大きくなく、境目がはっきりしなくなるように思います。

寝たきりになって、意識も時に低下しがちになると、患者さんがこの世とあの世の境目、いわばグレーゾーン内に居るような状態になります。そうすると日常生活の中で死ぬことがあり得ます。

実際、最近私たちのクリニックのドクターが、普段の診察のつもりで施設を訪れた際に、こうした死を経験しました。

部屋に入った時に患者さんは亡くなっており、ドクターが第一発見者になりました。聞けば、つい先ほどおやつも食べたとのことです。

こういう場合は、大往生ということになるのでしょうか。私も超高齢者になったら、日常生活の延長として死ぬことができたらいいな、と思います。