拾って来た女

店の中は、雨の日で行く所が無いのか連れて来られた小さな子供たちが走り回り雑然としていて騒がしかった。

それでも美紀は一階と二階をこまめに見て回り、漁火で使う細々した雑貨と普段着のTシャツや下着などを買い揃えた。気がつくとそこで二時間半あまりを費やしていた。

「確かに買い物って気晴らしになるわね。時間の経つのも忘れちゃうんだから」

そんなことを思いながらパンパンに膨らんだ買い物袋を右手に提げ、左手に傘とバッグを持ってショッピングセンターの出口に向かった。

外はまだ雨が降り続いていた。

「いい加減に止んでくれないかしら。せっかく晴れた気分がまた滅入りそう」

そんな独り言が思わず口を吐いて出た。

美紀は買い物袋が傘からはみ出て雨に濡れるのを気にしながら駐車場に停めた車のトランクに積み込んだ。遅がけの朝食でそれほど腹は空いてはいないが久しぶりに鵜方まで出て来たのだから何か美味しい物でも食べて帰ろうと思った。

漁火で摂る昼食は、朝食と同じように暇なときに多めに作って冷凍庫に保存した料理をレンジで温め直したものがほとんどで、雨で気分が腐る中、家に帰って一人でそんな食事を摂る気にもならなかったのだ。

ショッピングセンターを出ると降る雨の中、少し車で走り何度か来たことのある国道沿いの小洒落たレストランに入った。玄関近くに置かれた生簀代わりの大きな水槽には鯛や鯵、鰯などが泳ぎ回っている。

美紀は、奥の窓際の席に腰を下ろすと客商売の習性からかすぐに店内をぐるりと見回した。

この雨が祟っているのか昼食時にしては客の入りはそんなに多くはなかった。

チラホラと座席に散らばる客の中に地元の人間とは少し違う雰囲気の女が四人掛けのボックス席に座り一人でポツンと食事をしている姿が目に留まった。

女は際立った色の白さをしていた。

入り口付近の窓際の席でこちらを向いて座り、時々窓から雨の降る景色を眺めながら海鮮料理を食べていた。

美紀は伊勢海老の造りがついた手捏ね寿司のセットを注文し、食べながら見るとはなしに女を眺めた。

女も美紀の視線を感じたのか二人の目が合った。

女は若くて美しかったが、その視線には言いようのない暗さが宿っていた。垢抜けした風情と着ている高級そうなワンピースは女が都会から来た観光客であることを語っていた。

しかし、美紀にはこんな雨の日に女が一人ここまで観光に来たとは思えなかった。

美紀は女が気になった。外見は華やかだが、思い詰めたような表情で箸を口に運ぶ動作も緩慢で、体からは自分一人がこの世の不幸を背負っているとでも言いたげな暗いオーラを放っているように感じたからだった。