東大受験はアスリート並みの僅差の勝負

東大受験とはどういうものなのかを見ていきましょう。東大受験生の中には、それこそホントに余裕で合格する人もいると思います。しかし、大手予備校の分析によれば、ほとんどの受験生はボーダーを挟んで二十点ほどのゾーンにひしめいていると聞きます。

しかも、センターでの得点圧縮などで、百分率ではなく実質千分率で合否は決まります。模試のA判定でも油断はできません。国語の問いの「……はどういうことか」という設問の意図を、その時、人生でたった一度読み間違えるだけで、やはり合格できない可能性が出てくるのです。

A判定でも必ず合格するわけではないし、逆にD判定でもそのうち五分の一は合格すると言われています。合否は千分率。わずか〇.五点差で不合格になることがあるなんて、どうしたって悔しいでしょう。

しかし、そういう勝負と知って挑んでいるのが、東大受験なのです。アスリートの勝負と何がちがうのかわからないくらい僅差の勝負ではないでしょうか。受験生のうち、現役生は現役生で、自分の学力上昇が本当に入試に間に合うのかどうかわからない状況で一年間耐え抜く精神力が必要となります。

その不安に耐えて、暗いトンネルの中を突き進むような実行力が必要。そして、実行力を支える計画力が必要。また正しく計画を立てる情報力が必要。後方支援もやはり必要。

受験勉強をすることは、部活や専門競技で戦うのと全然変わりません。浪人生は浪人生で、不合格通知をもらった直後に、高三のときの受験勉強をもう一年続けようと決心するわけです。本人の意識はもっと深刻かもしれませんが、保護者から見たらその精神力は見上げたもの。そういう強さがあるということが一つ重要なのです。

東大に限らず、難関大学の難しさはどこも同様で、飛び抜けて安泰ということがあまりありません。そこに挑戦しますか? ……と問われているのです。しかも合格しなければ、経歴には何一つ残らないわけです。頑張ってほしいです。

「勝ってから戦う」姿勢で受験に臨む

では、この受験をどう考え、どう計画すればうまくいくのでしょうか? 端的に言えば、「東大に行く準備をすれば、東大に行ける可能性が出てくる」ということです。ポイントは、「準備する」。これを、世の中では「段取り八分、仕事二分」と言い、私どもの塾では「勝ってから戦う」と言っています。

「戦う」の部分が高三の一年間。それまでは、勝つための準備になります。中高六年間の青春のすべてを東大受験にかけるという熱心な人もいます。勉強を自主的に楽しめるなら大賛成しますが、そうでない人は、やはり自分を磨いていないと、最後の最後、追い込みのところで無理が利かなくなってくるかもしれません。

最後の最後、結果がどうなるかわからないその時、そこにいるのは自分だけという瞬間があります。入試のためだけにそうするわけではありませんが、入試を目前にしたその瞬間のためにも「自分力UP」は欠かせない活動ですね。

「通ればいい」という考えは、あまりお勧めできません。東大を目指した受験勉強が一年であれ、六年であれ、「何でもいいから通ればいい」という考え方でいると、東大合格の可能性がなくなったと思ったときに、人生目標を喪失してしまうからです。極端な場合、命にかかわるようなことにならないとも限りません。

そこで「受験勉強を一年間で済ませる」ために、大学を卒業して何をするか、そのために大学で何をするかという目標設定を正しくすることが求められます。

そして、高校三年生になるまで、学年ごとに高い基礎力を蓄えていくことが求められます。受験勉強としては高校三年生の一年間で済ませるのですが、そこまでのすべての学年で、そのとき学んだことを、その学年のうちに十分なレベルにしておくこと。これが、「準備する」ということです。

準備し、予測し、受験勉強を予定しておくのです。長い準備をして受験生活に入るのですから、失敗する可能性はきわめて小さい。これが、「勝ってから戦う」ということです。しっかり準備しておくから、高三の一年間で戦えるのです。

この点、中高一貫校は有利ですね。中学一年のころから、どのポジションにいればどこに行けるか、多くの先輩の経験を元に、具体的に細かく六年も前から見えているわけです。

公立中学校の場合、高校受験が間に挟まると、そこでいったんリセットされます。このリセットがうまくいくかどうかが、かなり際どい話になります。超進学校に入ってうまくいく子もいれば、その下の進学校で花開く子もいるのです。

覚えること、関連づけること、思い出すこと、知識の脳内ネットワークをつくること、体力、精神力、注意力、目標に向かうエネルギー、体の我慢、気持ちの我慢、睡魔との戦い、よく本を読むこと、楽しむことなど、興味・関心・意欲、知識・理解・技能、思考・判断、創意工夫、表現・伝達の一つ一つが全部必要なレベルになるまで、その都度身につける努力を続けることが大切です。

一人で行うのが難しければ、仲間や塾とともに突き進みます。こういうことができる場はどこなのか、自分を振り返りながら決めていくわけですね。