公立校の保護者には「学校は選べない」という意識がある?

私は公立中学校での教職活動二十四年の間、いろんな親御さんとお話ししてきました。

担任を離れることはほとんどなかったので、年に二回の保護者会と三年生では進路の話、また時期を選ばず生活指導の話をしてきました。そこでは、私が教員としてお子さんの現状や教育にアドバイスをさせていただくことよりも、お母さん方から教えていただくことのほうが多かったように思います。

例えば、二十数年前、ある生徒がいじめ被害に遭ったその日に、「トラブルがあっても、子どもはみんな一生懸命生きているだけですからね」という言葉を、その子のお母さんから聞いたのは衝撃的でした。学校としては責められて当然の場面ですが、お母さんの意識はそれを超越し、子どもたち自身のことを思ってみえたのです。

私が出会ってきたのは、優しく、明るく、賢く、よく働き、学校にも協力的で、教育に積極的な意味を見いだしているお母さん方です。

反面、ゆとり教育批判の時代でもあり、モンスターペアレントを含め、いろんな親御さんが見えたのも事実です。最初から「学校にはあまり期待していない」という冷めた見方のご家庭もけっこうありました。親御さんご自身の体験からそう思っておられる方も見えましたし、悪い塾から吹き込まれてそう思っておられる方も見えました。

しかし、「学校には期待していない」ということになると、しかたなく通わせている感じになりますね。これは、「学校は選べない意識」です。

確かに、公立同士で好きな学校は選べない地域がほとんどです。でも、地元の公立がイヤなら、近くにある私立校や国立校を選ぶ方法はありますね。ただし、入試があるので入れない人もいることから、公立小中学校には、「しかたなしに通う」意識が、いくらかは残るのかもしれません。