素敵な和食の料亭。暖簾をくぐると、白木の店内で清潔感溢れている。私が入ると女将さんの手がやはり止まった。

「い、いらっしゃいませ。山本様がお待ちです。どうぞ」

個室に案内された。

「着物、気に入る物、ありましたか」

「ええ、素敵な着物を買っていただきました」

「運転手から聞きましたよ。仲が良い夫婦だって」

「あら、そうですか。ウフフフ」

食事が出てきた。京料理の美しい事。

「僕も、再婚考えてみようかな」

「山本さん、私達が帰った後、四人で何か話しましたか?」

「彩香が由紀さんと離れるのが嫌だと言って変な事を言うのですよ。お父さんと結婚してってバカなことを」

「どう思いましたか」

「えっ、ゆりさんどういう意味?」

「山本さん、一番近くにいますよ。あなたのあげまんが」

「き、急にどうした」

山本さんは箸を落とすし、僕は味噌汁を吹き出しそうになる。

「山本さん、こらえてください」と俊さん。

「だって、山本さんわかっていません。山本さんは十年の間に美人やグラマーな女性など、たくさんとセックスしたと思います。どうでしたか。終わった後、この女性を朝まで抱いていましたか。済んだらベッドを離れたんじゃないですか?」

山本さんはこらえていました。 

「終わった後も愛おしいですよね。俊さん?」

やはり、僕に振るんだ。

「そ、そうだね」

「山本さん、いつでも側にいて疲れない人、側にいても気にならない人、いるんじゃないですか? 去って行くかもしれませんよ。いいのですか? だって、年をとるとおっぱいは下がるし、しわはできるし、お尻は下がるし、上がるのは血圧だけです。それは男性も一緒です。女性だけにもとめるのはいけません」

山本さんを見たら、笑いを我慢している。僕も同じだ。

「でも、少々下がっているおっぱいを大好きな人もいますよね。俊さん?」

僕はずっこける。山本さんは口を押さえて笑っている。

「ね、俊さん」

「はい、大好きです」

「ほら、ね」

僕は我慢できず笑ってしまった。

「これからは、お互い思いやりながら年を取りたいですよね。優しく生きたいですよね」

「山本さん、明日から身近な人をよく見てくださいね。きっとみつかりますよ」

「ゆりさん、ありがとう。なんか楽しくなってきた。明日からワクワクです」

九時頃お店を出た。 

「今井さん、来月の企業会に参加します。楽しみです」

「楽しみに待っていますね」

「明日は気を付けて帰ってきてください」

「山本さん、さようなら」