双方共に何か気まずい雰囲気の中で意思疎通もままならず、言葉のやり取りも中身が伴わず言葉数も次第に少なくなり消えていく。双方共に黙ったままというありさまだ。

音楽を愛好する者にとって二宮家はクラシックの生演奏を伴うサロンを時々開いてくれることで、来栖にも憩いの場を提供してくれていた。いまどきこのようなサロンが残っていること自体、時代遅れの遺物ともいえるし、逆に貴重な絶滅危惧種の存在かもしれない。

二宮家の分家筋にあたる百合の叔父がサロン全体の運営を取り仕切り、彼女と兄の二宮守が例会のセッティングや案内状の送付など、具体的な業務を担当している。もちろんサロンの内情につき、あらましを知るようになったのはサロンに出入りするようになってからの話だ。

二宮本家の長男と長女にあたる守と百合の二人とはこのサロンで知り合った。

しかし何回も二人と顔を合わせるようになったのは事実だが、兄妹と個人的につき合うようにはならなかった。

音楽サロンの例会には二宮守のほうはまめに出席してはいたが、毎回コンサートの準備が整ったあたりでいなくなっていた。

妹の百合のほうが毎回出席し、例会の進行や個々の出席者の世話をすることに専念しており、来栖が二人と個人的に話せるような機会はめったになかった。

二人と親しくなれるような契機はむしろ百合の兄との関係で出てきたかもしれないが、現実にはこのほうでもそうはならなかった。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『ミレニアムの黄昏』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。