(2)関連する法律の整理

これらの個別の作業を行う前に、関連法律の整備が必要である。まずこのようなことを行う上での理念や権限、責任を謳う必要があり、移住対象エリア内の説得に応じない人への強制的な働きかけ、所有者が見つからない空き家の国有財産への編入などができることを法律で規定する。

(3)データベースの統合

今回のコロナ禍で10万円の一律給付金支給のためにマイナンバーが殆ど機能していなかったこと、また政府や自治体の設備が遅れていて、リモート会議が殆どできなかったということが報じられている。

さすがに政府も住民記録や税・社会保険などを管理する自治体のシステムについて、標準仕様への統一を義務付ける新法を制定する検討に入った。

さらに各省庁で足並みのそろっていないデジタル情報の一元管理や国と地方のシステムの共通化を進める行政のデジタル化を進め、それの司令塔として現在の政府CIOである内閣情報通信政策監の権限を強化する。これを2021年の通常国会に提出予定のIT基本法改正案に盛り込むそうだ(2020年8月4日付日経新聞)。

一方行政のデジタル化によって損なわれる利益や弊害にも留意しなければならない。件の10万円が機能せず混乱が生じた要因は、もともとマイナンバー制度が個人情報を一元管理しない構造にしているからであるが、これは国家による情報の一元管理を防ぐという思想のもとに、個人のプライバシーを侵害することがないよう設計された結果からである。

不正アクセスによって全国民のデータが漏洩したり失われたりしないようにするための、必要な措置のひとつであった。確かに国民の多くが国に情報を握られたくないという漠然たる不安感とか、警戒感のようなものを持っている。しかしこれはシステムの設計次第でいくらでも防げるはずである。

ただしどんなにセキュリティレベルの高いシステムを作っても漏洩をゼロにすることはできないので、漏洩が起きた時のログの把握を万全なものとし、漏洩に関わった個人や組織を事後的に探し出し、刑事罰にするなどの制度を同時に定めるところまで進めるべきである。

そしてこのような仕組みをマスコミ等を通じて国民に説明し、国民が正しく理解し余計な不安を持たないで済むようにしなければならない。そのうえで空き家に関する情報管理だけでなく、国民生活全体に関わるデータの一元化を是非進めてほしい。

大移住プロジェクトが本格的に動き出すまでには、データ一元化がかなりのレベルまで進んでいることを期待したい。

(4)資金管理

莫大な金が動くので、厳正な管理を行う財務部門を置くことは言うまでもない。

(5)広報

常に国民に向けて、進捗状況や発生する課題、それをどのように解決したかなどをタイムリーに知らせる広報部門も必要である。

(6)監査

この組織はおそらく最盛期には1万人を超える要員となり、莫大な金と権限が集中するだろう。運用を誤るとかつての陸軍のように暴走しないとも限らない。

それを監視する仕組みも一方で必要である。組織内だけでなく、外部からも監査する仕組みが必要である。またこれが本当に公平、公正に運用されているかを常に監視し、必要があれば制度設計を見直すこともしなければならない。

さらにこのようなことが始まると、中には不正を働いたり、これに絡めた詐欺のようなことも出てくるかも知れないので、それらに関する厳重な管理も必要である。