魑魅魍魎が嗤う―宗教と恋愛―

寺院巡りで、これだと思うヒントを見つけることはできなかった。

日本大使館の紹介で日本語がわかる、サドゥー(修行僧)にヌチドゥのことを尋ねた。

サドゥー「探しても見つかりはしないよ」

弥生「日本から来たんです、何としてでも会いたいんです、どうすればいいのですか?」

サドゥー「あなたは 外側へフォーカスしている、そんな状態では、一生会うことはできないだろう」

弥生「外側? 現実に目を向けているということですか?」

サドゥー「あなたは、自分以外へとフォーカスしています。頭で理解しようとしています。そんな状態では一生会うことはできないだろう」

弥生「理解? 理解しないと、納得できないじゃないですか」

サドゥー「あなたは理論を積み上げて来ました。論理的に解決策を見つけようとしています。そんな状態では一生会うことはできないだろう」

弥生「現実を見つめて、行動に移しているんです、日本にいるときに綿密な計画のもとに、行動しているんです、日本では備えあれば憂いなし! といいます」

サドゥー「あなたは、自ら、出口のない迷路に飛び込んで、綿密な計画とやらで、右往左往、騒いでいるのです。そんな状態では一生会うことはできないだろう」

弥生「出口のない迷路とおっしゃいましたが、私は出口が存在している迷路で解決策を探しています。根本的に、あなたと私の設定が違います。私は、ヌチドゥに会うためにきました! だから会えます! だから、会うにはどうすればいいのですか、教えてください」

サドゥー「あなたのそのような状態が『出口のない迷路』で騒いでいると言うんです」

弥生「だからぁ、設定がぁ、違うと言っているでしょ」

サドゥー「あなたは、すでに私と出口のない迷路に入っているのです。そのような状態では一生会うことはできないであろう」

弥生「えっ、なに、あなたも迷路にいるということ、つまりぃ、あなたも、ヌチドゥに会うことができないということなのですか?」

サドゥー「私はいつでも、出口のない迷路から抜け出ることはできます!」

弥生「だったら、その方法を教えてよ!」

サドゥー「あなたの今の状態では 一生会うことはできないであろう」

弥生「わかりました。お金よね、最初にお礼にお金と言わなかった、私が悪かったわ。いくら欲しいの?」

待ってました、と、言わんばかりに右手を出して

サドゥー「日本円で、5千円」

弥生(ちゅ、躊躇しないのね、)「はい、はい、5千円ね」

初々しく頭を下げながらも今度は左手を差し出す。

弥生「ハァ? ちょっとぉ、何よ、これ」

左手をチョイチョイと折り曲げて、催促するのだった…。

弥生「うー、もう、わかったわよ、はい、あと5千円!」

サドゥー「ヌチドゥ様の居るところは、あっちです」

サドゥーは、合計1万円を握りしめながら、山々を指差すのでした。

そして、さも大げさに、ヌチドゥの名前を呼びながら、その方角へひれ伏すのでした。

弥生「ちょっとぉ、あっち、って、言われても、ヒマラヤ山嶺じゃない、広すぎてわからないわよ。ピンポイントで教えてちょうだい。お金は出したんだからね」

サドゥー「あなたは森を見て、木を見てないです。そんなことでは一生、ヌチドゥ様に会うことはないでしょう」

弥生「だから、その木を教えて、と、言っているの」

サドゥー「あなたは 木を見て、森を見ていないです。そんなことではヌチドゥ様に一生会うことはないでしょう」

弥生「ちょっとぉ、何よ、それ、もっと、金をくれ、と、言いたいの、う~ん、ちくしょう、そら、1万円」

サドゥーはまたもや初々しく頭を下げながら…。

またもや、ヌチドゥの名前を呼びながら、山々へひれ伏すのでした。

日本円で2万円はインドでは大金だ、場所によっては、5人家族が裕に1ヶ月はくらしていける。交渉しないで、言われるがままに出してしまった。

このサドゥーは味をしめて、もっと金を要求する気だな。

サドゥー「明日、あの山へ、わたしが案内します、1ヶ月はかかります、明け方、6時にこの寺院へ来てください。あと、8万円、旅の支度に8万円かかります」

結局、10万円を渡すはめになってしまったのだった…。

寺院のある地図を渡されて、サドゥーは足早に去っていくのでした。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『ヒマラヤ聖者の秘宝』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。