糖尿病モデルマウスへのMAFの効果

研究費のほうは何とかなったのですが、もう一つ問題がありました。MAFの分子量は、小澤哲夫先生の測定では9,000から18,000と非常に大きく、腸管から体内に吸収されないのではないかという問題です。この問題は企業でのプレゼンや学会でのプレゼンで多くの方から指摘されていました。

この問題を解決する中田教授の提案に、私は驚きました。彼の提案は、毎日MAFをマウスの腹腔に注射するというものでした。

確かに腸管から吸収されるかどうかという問題は解決できましたが、10週間毎日、24匹のdb/dbマウスの腹腔にMAFを注射しなければなりません。毎日、休みなく、間違えることなく、マウスを殺すことなく、腹腔にMAFを注射するのです。藤原君は躊躇することなく、この実験に取りかかりました。彼の勇気と決断力には頭が下がりました。

彼はdb/dbマウスを8匹ずつ3グループに分け、「コントロール群」は生理食塩水0.1ml、「9μgMAF群」は0.09mg/mlMAFを0.1ml、「27μgMAF群」は0.27mg/mlMAFを0.1ml、それぞれの群のマウスの腹腔に毎日注射しました。期間は10週間です。

土曜、日曜もなく、毎日24匹のdb/dbマウスの腹腔に注射し、1週間ごとに全個体の体重を測り、2週間ごとに血液を採取して血糖値を測りました。この実験は筑波大学の「実験動物の世話と使用のためのガイド」にしたがって行いました。

しかし、途中で死んでしまうマウスもいて、最終的にはそれぞれの群で生存していたマウスは5匹から6匹でした。

実験の結果は私たちの予想を超えるものでした。「27μgMAF群」では、9週目から体重増加が抑制されました(図表1左)。

[図表1]2型糖尿病マウス(db/db マウス)の腹腔にMAF を注射した効果。左図.MAFの体重に及ぼす効果。右図.MAFの血糖値に及ぼす効果。●「コントロール群」(生理食塩水)。■「9μgMAF群」。▲「27μgMAF群」。*は「コントロール群」との有意差ありを示す(P<0.05)。

血糖値は「9μgMAF群」と「27μgMAF群」で8週目から、コントロール群と比較して有意に低下しました(図表1右)。