種男貸し出し

西暦2320年、日本人口1億5千万人。女性人口1億4999万9853人。男性人口147人。

男女比が極端にアンバランスになってしまったのは、300年の間に、4度という戦争が起こったことも大きく影響していると思われたが、果たしてそれだけだったのだろうか。

男性147人の平均年齢27歳。日本の新たな試み、それは、徹底的な女性国家を築くことだった。男は種族保存という目的で優れた遺伝子を持つほんの一握りの男たちがこの世に存在する。

男として生まれるのを許される者たちは、全員の母親が過去5世代に亘り、癌、精神疾患、心臓病の経歴が確認されないこと、矯正なしでも歯並びが良く頭脳明晰な者であった。さらに、全体の0.05パーセントの者に限られた。

彼らの精子は精子バンクに収められ、日本人女性は、19歳から27歳までの9年間のうち、10回まで無料でこのバンクに登録された精子を受け取ることが出来る。

この男たちの精子からは女子以外は生まれないことになっている。男の子が生まれる精子は特別な、選ばれた女たちの為だけに精子特別管理局で厳重に管理されている。

この選ばれた能力を持つ女を捜す特別捜査官は全国に2千人。もちろん全て女性だ。

日本で希少な男たち種男、147人は、毎月抽選会で当選した女たちに3日間だけ貸し出しされる。この抽選会に応募できる資格を得るのが大変で、書類審査や様々な試験を受けなければならない。

もちろん、女たちにはこの147人の中から自分が気に入った男を選ぶ権利があり、抽選で当たった時点で男たちの顔、頭脳がわかることになっている。もしこの男との間に子供が出来た場合はどんな顔の子供が生まれるかシュミレーションでわかるシステムだ。

男たちにも選ぶ権利は与えられており、極稀に誰からも貸し出しされない男が出る。

貸し出し可能な種男が出現した際はニュース速報で流され、その日の午後9時から電話予約が始まる。この電話が繋がる確率は低く競争率も激しい。