「名前は阿部ゆりです。五十二歳です。約一年前に先ほどの人と離婚しました。一緒にいた女性との不倫です。彼は二つ年上で学生時代から付き合って卒業と同時に結婚しました。

息子が二人居ます。長男二十七歳、次男二十六歳、二人とも素敵なお嫁さんをもらい独立しています。孫が四人居ます。毎週金曜日は孫達が泊まりに来ます。息子達は私が寂しいと思いそうしているようです。嬉しい気づかいです。

今は一人暮らしにも慣れ自分だけの時間が出来て幸せです。絵画教室、洋裁教室と趣味もありますし充実した毎日です。私だけしゃべってしまいましたが私の紹介です」

「お腹も空きましたね。食事に行きましょう」

「えぇ」

素敵なレストランへ着いた。

「今度は僕の紹介をしてもいいですか。僕は五十歳、独身です。結婚はしたことはありません。五~六人の女性とお付き合いはありますが結婚までは至りませんでした。

五年前に一人だけ、好きで別れた女性がいました。僕より、留学を選んだのです。心の痛みが消えるのに一年かかりました。

女性は金や地位ばかり気にしているようで嫌でした。一人が気楽かなと思い独身を通しました。さっぱりした人生です」

少し時間をおいて、

「でもあなたと知り合い、毎週火曜日が楽しみです。待ち遠しいです。これからも僕と時間を過ごしてほしいです」

「私は離婚してから男性と話すのがすごく嫌でした。でも今井さんは大丈夫でした。誠実さが伝わるからですね。私で良ければ人生を楽しみましょう」

ワインで乾杯した。

「又、来週楽しみにしています」

九時頃別れて、久しぶりに楽しかった。

月曜日、今日は洋裁教室が終わってみんなでお茶でもしましょうということになった。

五人で近くのカフェに入り席に案内されて座ったら後ろから、

「こんにちは」と声が今井さんだった。

「えぇッ」

二人で大笑いした。みんな、キョトンとしていた。本当に縁があるのだろうか。不思議だ。

「どなた? 素敵な人ね」

「絵画教室の友人。よく偶然に会うの」

と話した。今井さんは友人とクラス会の打合せをしているようだった。小一時間おしゃべりをして今井さんに軽く会釈してカフェを出た。

今井さんの会話。

「俊輔、あの素敵な女性は誰? すごい美人ではないけど、清楚で暖かでふんわりしていて優しく笑う女性だな」

「僕はあまり一目惚れをしないのだが、あの女性が気になってしょうがない。彼女と本当に偶然によく会うし不思議だ。彼女に重症な恋をしてるくらい。毎週、絵画教室が待ち遠しい。

先日、一緒に時間を過ごしたいと話したんだが、少し勘違いしている。友人としてお付き合いと受け止めたようだ。明日、改めて申し込むつもりだ。

食事を割り勘で払うんだ。僕は初めてだよ。女性と割り勘するの。少し頑固なところがあるようだ。そこが又、良い。彼女といると疲れないし癒される。包まれているようだ」

「重症だな。珍しいな、こんなに女性に惚れるとは。頑張れよ」