折しも東京都がアジア金融のナンバーワンの地位を取り戻すという目標を掲げているときでもあり、まるでそれにノーを叩きつけるかのようであると言う意味でも私にはショックの大きいものだった。

また、その他の分野、たとえば航空の分野でも、かつては成田空港が東アジアの中心であり、アメリカやヨーロッパからの便は成田で乗り換え、東アジアの国々へと行くのが普通だった。

だがいまや韓国の仁川空港、上海の浦東空港、また北京には首都国際空港に加え新たに世界最大と言われる大興国際空港というのが令和元年(2019)にできたいま、この分野での日本の存在感低下は認めざるを得ない。

次に、現状維持ではダメで「ベンチャー精神」が必要ということを今度は、日本の歴史で振り返ってみたい。

直近のわかりやすい例は、明治維新だ。260年に及ぶ江戸時代、士農工商という身分制度のもと、鎖国を行い武士が国を治めていた。

その間、世界は欧米諸国を中心に大きく発展した。幕末になってロシア、アメリカ、イギリスなどが日本の国土に迫るなか、江戸幕府も変化に適応しようとはした。

しかし、しょせん目の前の小手先細工の域を出ず、武士が国を治めるという国のあり方を最後まで変えることはできなかった。

つまり、新しい枠組みに思い切って変えるという「ベンチャー精神」がなかった。

結局、薩摩や長州などの下級武士がまさに「ベンチャー精神」でもって明治維新を起こし、士農工商の世襲の身分制度を廃止し、生まれにかかわらず優秀な人材を登用するという国のあり方に変えたからこそ、他国の植民地にならずに済んだ。