「ベンチャー企業」という変な言葉を、変だと思わなくなった日本

いま、「ベンチャー企業」という言葉がごく普通に使われている。

だが、これは変な言葉だ。そして、誰も変だと言わないのはもっと変だ。

「ベンチャー(Venture)」は、「アドベンチャー(冒険)」と語源が同じで、新しいことを手がけることだ。一方、「企業」とは文字どおり「業」を「企る(くわだてる)」ことだ。

つまり、「ベンチャー企業」というのは「頭痛が痛い」というのと同じ間違え方であり、同じ意味の言葉をわざわざ繰り返している。

そもそもベンチャーでない企業などあるのだろうか、と聞くたびに不思議に思っていた。世界的に有名な経営学者のピーター・ドラッカーも「企業の目的は顧客の創造である」と言っている。

企業が新しいことに取り組んでいこうとするのは当然ではないかと思っていたので、これを機に調べた。

結果は何のことはない、単に「ベンチャー企業」というのは「和製英語」だった。英語では「start-up company」というらしい。これならわかる。「新しく立ち上げた(start-up)企業・会社」というごく自然な意味になる。

別に「ベンチャー企業」という言葉そのものに責任はない。問題なのは、なぜこんな変な言葉が生まれたのかという、その背景だ。

こうした言葉の問題を考えるとき、まず理解が必要なことがある。それは、我々が話をするとき、当たり前のことはわざわざ言わないということだ。

たとえば、「女社長」とは言うが、「男社長」とは言わない。それは、日本で「社長」と言えばまだ大多数が男性、つまり「当たり前」で、女性の社長がまだ例外的だからだ。

すると「ベンチャー企業」という言葉が生まれ、それが違和感なく使われているということは、いまの日本では新しいことに取り組む企業が例外的ということになる。

私などは古い人間なので、新しいことを手がけない企業と言えば、せいぜい、伝統を守ること自体に価値がある老舗か、もしくは共産主義国家の国営企業くらいかと思っていた。

だが、どうも平成時代が終わってみたら、様子が変わっていたらしい。単なる雰囲気だけで判断するのもよくないので、公的なところで出している「開業率」の変化を見てみたが、やはり下落傾向にある。

今度は、ネットで「起業」や「脱サラ」というキーワードで検索し、いろいろなサイトを見てみたが、全体的に身構えている感じがする。

危険だから止めておけとか、設立の細かい手続きがどうとか、といったものが多い。本来は「ベンチャー」が持っている、明るく、前向きな雰囲気が感じられない。