キッチンで一緒に

及川は、弓子が未だに独身であることに、納得していた。もし、弓子が結婚をしていたら、弓子は、自分以外でも男性なら条件が整えば結婚してしまうんだと思うところだった。

弓子は、自分のプロポーズを断った時に、出版社の仕事は辞めることはできないから、ニューヨークにはついていけないと言っていた。だから、自分のことを嫌いで断ったわけではないことを確認できたような気分になっていて、弓子が未だに独身であることに満足していた。

その後、二人は時々会って、夕食を一緒にするようになっていた。そして二人は、かつて恋人同士であった頃のことを思い出していた。二人とも、お互いに嫌いで別れたわけではなかった。

弓子の仕事の都合で別れたのであった。二人の間には、いつしか再び恋愛感情が芽生え、とうとう不倫をする仲になってしまった。

それで弓子は、自分の人生の選択に誤りがあったのではないかと悩むようになっていた。及川に家庭があるのをわかって付き合っている自分を情けないと思い、苦しむようになっていた。夜も眠れないようになっていた。

弓子は、及川が週末に、家族と団欒を楽しんでいることを考えると、嫉妬して寂しくて今にも泣き出してしまいたい気分に襲われた。自分から、及川のプロポーズを断っておいて、今になって、このような心情になっている自分をみじめに感じた。

それで弓子は、週末は何か気分転換になるようなことをしてみようと考えるようになっていた。一人でいると気分が落ち込むので、誰か仲間と一緒に楽しめることをしたいと考えるようになっていた。

それで弓子はインターネットで、飯田橋に、料理教室があることを発見した。その料理教室は、普通の居住用マンションの一室にあった。