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不倫相手の及川を思い出すと辛い…気を紛らわすため、料理教室へ

ハンバーグはまず初めに、玉ねぎの皮をむいたら半分に切って、縦と横に切れ目を入れ、みじん切りにしたら、フライパンにオリーブオイルを薄く引いて炒める。

ボウルに卵一個とパン粉を計量カップ半分、牛乳大さじ二杯、豚ひき肉四百グラム、それに炒めた玉ねぎを入れて、よくこねる。

キッチンペーパーできれいに拭いたフライパンにオリーブオイルを薄く引いて、六等分したハンバーグのたねを丸くまとめて中央を平らにして、一度に三個ずつ焼く。

トマトケチャップとトンカツソースを混ぜ合わせて、ハンバーグ用ソースを作る。人参のグラッセは、人参を輪切りにして面取りしたら、少量の水を入れた鍋で煮て、柔らかくなったら、バターと砂糖を適量入れて水けがなくなるまで煮る。

いんげんは、ゆでたら、ざるにあけて、両端を切り落として三等分する。ベイクドポテトは、じゃがいもをくし切りにしたらレンジで温めて、柔らかくなったら軽く塩を振り、フライパンにオリーブオイルを入れて、表面がカリカリになるまで焼く。

クリームコーンスープは、缶詰のクリームコーンを鍋に入れ、からになったクリームコーンの缶に牛乳を注いだら、鍋に牛乳も入れてクリームコーンをよく牛乳と混ぜ合わせて塩を適量振って温める。

サラダはレタスを手で一口大にちぎり、太めの千切りにしたきゅうりとともにボウルに入れて、オリーブオイルと酢と塩を適量入れて、大きく混ぜ合わせる。これで完成だ。

皆は作業を手分けして行った。皆は料理を作り終えると、白の丸い洋皿にハンバーグと、付け合わせの人参のグラッセ、ゆでいんげん、ベイクドポテトを彩り良く盛り付けた。

クリームコーンスープをカップ状のスープの器に注ぎ、レタスときゅうりのサラダは、小さめの皿に盛った。それにフランスパンを切って、かごに入れた。

皆は、でき上がった料理を、座卓の上に並べた。それぞれが、座卓の前に敷かれている座布団の上に座った。

さとるは、弓子が座ると、その隣りに行って正座した。

「皆さん、食事の準備はできましたね。それでは皆で頂きましょう」

先生がそう言うと、皆で、手を合わせて頂きますと言ってから食事を始めた。弓子は、この料理教室の、こういう家庭的な雰囲気が好きだった。

料理教室に参加する前は、弓子は、及川の家族団欒の風景を思い浮かべて、一人寂しく食事する自分を、自分で哀れに感じていた。

料理教室に参加してからは、普通の家庭用のキッチンで仲間と一緒に料理を作り、皆で家族のように座卓を囲んで食事できることに幸せを感じていた。

「あっ。さとるくん、弓子さんの隣りに座ってる」

生徒の一人が言った。

「そういえば、このあいだのお茶の時も、弓子さんの隣に座っていたよね」

他の生徒が言った。

「わあ。さとるくん弓子さんのことが好きなんだ」

生徒の皆は、わあわあ笑いながら、言い合った。さとるは手を頭の後ろにあてると赤くなった。そんなさとるを見て、弓子はかわいいなと思った。

食事は、皆でとても楽しく行うことができた。キッチンの片付けも済ませ、お茶を飲むと、皆は帰宅の途に着いた。

弓子とさとるは二人で飯田橋の駅方向に歩いていた。その日は快晴で青空が美しかった。

「弓子さん、もしお時間があったら、少し散歩しませんか?」