借金地獄アメリカの破壊

ブッシュ43代はクリントンとブッシュ41代の野獣を飢えさせる政策から、レーガンの元祖野獣に餌を与える政策の新バージョンへと直ちに方向転換した。

ブッシュは2001年と2003年に主な減税を推し進め、防衛費と諜報関連支出を劇的に増額した。2003年にはブッシュは同時に3つの戦争、アフガニスタン、イラク、そして世界的テロに対し戦っていた。

大抵のアメリカ人は9.11攻撃のトラウマがあったためか、これらの戦争とそれに伴う支出の増加に疑問を持たなかったし、中東でのアメリカの利益を守るために必要なことと認識していた。また多くのアメリカ人はドットコム市場のクラッシュがあった2000年から2001年での景気後退時におけるブッシュの減税を歓迎した。

それでも、債務比率に与えた影響はすぐ現れ、予想通りだった。

比率はブッシュ就任時56.4パーセントだったものが彼の2期終わりには82.4パーセントとトルーマン政権以来、第二次世界大戦後の最高値であり、クリントンがなんとかクリアした60パーセントの危機的限界を大きく超過するものだった。

この債務比率の上昇は高い水準からのスタートではあったが、戦後に債務が増加するという歴史的パターンに沿ったものだった。ブッシュの任期終わりには、イラクでの戦争は終わった。アフガニスタンとテロとの戦いは長期戦になっており、コストがかかるものではあったが、それでも2002年から2007年にかけて見られたような巨額の支出ではなかった。

ブッシュ43代はレーガンの台本を繰り返すつもりだった。

彼は野獣に餌を与える政策をとったが、今や後継者バラク・オバマに野獣を飢えさせるメニューを与えたいと考えた。ブッシュは債務比率を管理可能な状態に戻すには、支出削減しか選択肢がない状況に追い込み、オバマの手足を縛ろうとした。ブッシュ43代はレーガンがブッシュ41代とクリントンにしたことをオバマにしようと考えたのだ。

そこに災難が起こった。ブッシュ43代の最終月に、アメリカは大恐慌以来最大の金融危機に見舞われた。

この結果、オバマは支出を削減するより、金融危機を乗りこえるために支出を増やすという完璧な論理的根拠を与えられることになる。野獣を飢えさせるかわり、オバマは野獣に餌を与える政策に更に注力した。2009年オバマのリーダーシップの下、アメリカは完全な金融破滅へと方向転換した。

オバマ政権第1期の巨額赤字(2009-13)はブッシュ43代の野獣を飢えさせる戦術の囮作戦と見るよりも、歴代進歩派民主党大統領らが持っていたアメリカのためのビジョンと理解されなければならない。ビル・クリントンもジミー・カーターも進歩派民主党員の期待通りに支出の拡大と福祉政策に着手することはできなかった。

カーターは目前のハイパーインフレの恐れに制限を受けた財政保守派であった。クリントンは債券自警団と1994年以後共和党が多数を占める下院の制限を受けた穏健派であった。

進歩派はジョンソンの偉大な社会(1965)とそれ以前のルーズベルトの最初の100日間(1933)に立ち返り、進歩派が歴代求めていた政府活動を知る必要があった。

歴史に残る社会福祉とメディケアの制度はルーズベルトとジョンソンの時代に可決された。オバマが大統領に就任した時には40年間これらに匹敵する重要な社会制度的法律の制定はなかった。進歩派は社会福祉支出を待ち望んでいた。