アメリカ“ドル”の支配を覆そうとする中国とロシアの動きを解説し、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙でベストセラーとなった話題作を伊藤裕幸氏が完全邦訳した『AFTERMATH 金融クライシスから財産を守る7つの秘策』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を編集・抜粋して紹介します。

CIA本部(別名ラングリーウッドの館)について

21世紀のグローバリゼーションの脅威に対しアメリカが長年使ってきた手段によりどう対処していくか、CIAの内部の展望を探ってみよう。

CIA本部はしっかりした建屋で、入場は厳しく制限されている。それでもその場所は秘密ではない。表玄関はドリーマディソン通りとも言われるバージニア123号線にあり、ジョージワシントン大通りからおよそ1マイル外れたところで、ポトマック河畔の南側堤防から遠くない。

道を尋ねる人をまごつかせるためなのか、本部辺りの道路標識は名前が3つつけられているようだ。ある地図ではドリーマディソン通りがチェーンブリッジ道路と記載されている。新聞記者は度々、CIA本部を『ラングリー』と呼ぶが、バージニアにはそのような街はなく、本部はマクリーンという街に位置している。この『CIA』というイニシャルは公式の本部名としては表示されておらず、公式では、インテリジェンスのためのジョージ・ブッシュセンターとなっている。この二重、三重の名称はCIAの欺くという主たる使命にピッタリである。

誰でもドリーマディソン通りからCIA本部へ入る道にハンドルを切ることができるが、公式バッジを所有しているか、あるいは表玄関近くの警備ビルで訪問者バッジが準備されていない限り入れない。訪問者の場合、警備のビルでバッジをもらうまでに厳しく検査されることになる。

いったん中に入れば、CIAのキャンパスは開放感があり、大都市近郊にある大企業のキャンパスと変わらない雰囲気がある。建築様式は明確に20世紀風であり、シアトルのアマゾンやシリコンバレーのアップルが採用しているような21世紀型ドームとか宇宙船風ではない。建物は二つの主たる建物から成り、旧本部ビル(OHB)と新本部ビル(NHB)は地上で結合しており、その間にある小さな公園をガラスの廊下が横切る形になっている。

私は2003年から世界金融戦線の最前線でCIA本部と現場にて働いてきた。私のプロジェクトはテロ攻撃直前のインサイダー取引に関するもので、市場データを使った予測分析や、なによりもアメリカへの海外資本による投資に関し、国家安全保障の観点から検討することだった。本部での楽しみの一つはOHBのメインフロアにあるCIA記念館を見て歩くことだった。

これは雪嵐で大勢のスタッフが出勤できない時の気晴らしになった。長年ニューイングランドで暮らした私には雪で仕事を休むことなど思いもつかなかった。しかし多くのバージニアの同僚達は交通マヒにあっていた。上部管理層は現地勤務者に配慮し、小学校のように雪の日を休みとする慣習にしていた。このような日は会議はキャンセルされるので、日常多くのスタッフが部屋から部屋へ急ぎ足で行き交う本部で秘蔵の宝を探索する休み時間となった。元CIA長官のマイク・ヘイデンはCIA記念館を「多分あなた方が見たことがないような素晴らしい博物館だ」⑵と一般にオープンされていない事情をふまえて言った。