オバマは彼らが期待する進歩派リーダーだった。

オバマは方針をいちいち確認するまでもなく進歩派がやりたいことを実行するための出来合いの政策を準備していた。2008年の世界的金融危機は経済を破壊し、失業率はうなぎ登りだった。

ホワイトハウスの経済チームは、クリスティーナ・ロマー、ラリー・サマーズ、オースティン・グールスビー、スティーブ・ラトナーのメンバーでラジカル進歩派ではなかった。

彼らは伝統的なネオ・ケインジアンであった。彼らの解決法は予測通りの巨額の赤字を伴う支出で経済に刺激を与える政策だった。刺激はケインズ学者の言う象徴的な乗数から生じる。クリスティーナ・ロマーの予測値では1ドルの赤字を伴う支出で、1.5ドル以上の経済成長がもたらされる。

後はオバマとその親しい政治アドバイザー、バレリー・ジャレットに任され、進歩派の求める政策一覧とネオ・ケインジアンの景気刺激策を混ぜ合わせて、2009年アメリカ復興・再投資法という法案が成立した。

これは事前に承認されていた基本的支出と不況時に生じる失業保険やフードスタンプなど自動的な景気安定政策の双方に、更に上乗せされた8,310億ドルの赤字支出パッケージだった。

2009年の景気刺激策はインフラ整備のためにすぐにでも着工できる促進策として売り込まれた。これはラリー・サマーズがやった不正だった。ほんの一部だけが重要なインフラ事業や製造業の基盤関係にまわされた。

資金の大半はリベラル派の関係者である教職員、役所職員、ヘルスケア関係、コミュニティ関係者など不況時にはレイオフされそうな人々にわたった。2009年の経済刺激策はアメリカ歴史に残る最大の進歩派への大盤振る舞いだった。

1946年から2016年までの70年間、年間予算での赤字の平均はGDP比2.11パーセントであった。これとは対照的にオバマ時代の赤字の対GDP比率は、2009年に9.8パーセント、2010年8.7パーセント、2011年8.5パーセント、2012年には6.8パーセントだった。

2014年まで予算上の赤字は歴史上の平均値に近づくことはなかった。オバマの時代に国家債務は9兆ドルからおよそ20兆ドルと2倍を超える増え方をした。債務の対GDP比率はジョージ・W・ブッシュが野獣を飢えさせる政策を押しつけたにもかかわらず、逆に100パーセント以上に噴き上がった。

オバマは巨額の赤字とうなぎ登りに増える債務の対GDP比率に加え、増税という最悪の組み合わせを創りだした。

これは、もしもネオ・ケインジアンが期待していた勢いのある経済成長を生み出していれば、許されたかもしれなかった。オバマのアドバイザーらは、もし債務が11兆ドル増えれば、経済成長は15兆ドル上乗せされ、債務の対GDP比率への影響は緩和されると信じていた。そんなことは起こらなかった。

それどころか、オバマが政権についた当初2009年6月から2016年の終わりまでの経済成長は年平均2.05パーセントで推移し、アメリカ史上最も弱い経済回復だった。成長率は1980年後の経済成長期の年平均3.19パーセントやレーガン時代の成長期(1983-86)初期の年平均成長率5パーセントを遙かに下回るものだった。

不吉なことにオバマの無様な経済運営は戦時ではなく平和時になされていた。それなのにビル・クリントンにはあった平和の配当はなかった。戦争後に見られる、繰り延べられていた消費とか、ゆったりした労働市場とか、回復目的の投資と言ったものはなかった。オバマの赤字は経済成長を先送りしたが、パーマネントな生産ギャップとして残り、次の政権において力強い経済成長に結びつくとは見込めないものだった。

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『AFTERMATH』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。