借金地獄アメリカの破壊

債務の対GDP比率を過去40年間に著しく増加させたのは、3つの共和党のロナルド・レーガン、ジョージ・W・ブッシュとドナルド・トランプ政権であり、1つの民主党バラク・オバマ政権だ。

線引きを明確にして、債務の対GDP比率を維持ないしは引き下げた大統領は共和党ではジョージ・H・W・ブッシュ、あとは民主党のビル・クリントンだった。

この国家債務を管理不能にした責任はどちらの政党にあると言い切れない。両党とも責任があるが、時期によっては両党もなんとか頑張ったこともあった。

赤字支出の管理に影響するのは、ホワイトハウスで政権を握る党ではなく、下院のムードであり、それはどの党が国会の多数を占めるかを問わない。

下院は1981年の深刻な不況に対処するためのレーガンの減税を支持した。下院はまた、レーガンの下、防衛費の大幅な増額にも賛成した。それまでジミー・カーターによって防衛がないがしろにされ、レーガンが言う『悪の帝国』ソビエト連邦の脅威があったからだ。

同様にブッシュ41代政権の1990年に下院は増税と支出削減を超党派で協力した。当時ベルリンの壁は崩れ、ソビエト連邦は崩壊し、アメリカが唯一の覇権勢力になった。共和党保守派は支出を押さえ込もうとしたが、民主党は支出の増額を認める代わり増税を主張した。

1990年下院は両方を認めた。ビル・クリントンも1993年に増税したが、増えた税収で支出を増やしたいと考えた。1994年の中間選挙で下院で敗れ、多数派が共和党となり議長にニュート・ギングリッジが就任したことで、クリントンも支出削減をせざるを得なくなった。

その結果赤字が削減されただけで無く、クリントンの最終年度には収支余剰が生じた。

このように、赤字はホワイトハウスの意図した政策の結果というよりは、ホワイトハウスと下院とがその優先する政策をすり合わせてやってきた結果と言える。

2018年2月に共和党と民主党が予算策定時に、すべての裁量支出に課された限度額制限を撤廃するという取引をした時に見られた防衛費の増額は手付け金みたいなものだった。

防衛支出のサイクルは10年か、それ以上の期間に及び、反動があるため同じくらい長い期間支出がなくなってしまう時が次に来る。

軍隊は現行の兵器システムを購入し、新兵器を開発したり、性能を向上させたり、使用済み巡航ミサイルの在庫を補充していると、規模が拡張し、メンテナンス、訓練、配置などの費用がかさんでくる。

民主党は軍事費1ドルに対し、ほぼ1ドルの国内支出を要求しているが、こういうことが続く限り、2018年度の3,000億ドルの赤字の影響は、2019年には4,000億ドルか、それ以上に増えそうで、その後の年度にも影響するとみられる。

共和党はトランプの税制改正の大失敗につき、責任を問われるべきであるし、民主党は国内支出に大食いしすぎたことの責任を問われるべきだ。

ホワイトハウスはこれの共犯者である。この2大政党は一緒になって、一般国民が低成長経済のもと、高金利に苦しんでいるのを犠牲にして、この債務に影響する大失敗をやらかしたのだ。

今やアメリカの弁済能力が脅かされている。減税、予算の上限撤廃それにその他債務増加要因に加えて、ワシントンの政治家が誰もが知っていて、口にしない大問題がある。