ディアナベスはじっとラウルの顔を見つめた。何かを考えている様子だった。しかしそれは数秒のことだった。彼女は突然真顔に戻った。

「そうね。ラウル。確かにあなたに任せた方が良さそうね。お願いします。」

自分が寝ずの番をして、もし途中で眠ってしまったら、それこそ大変なことになる。ここは大国の近衛騎士に任せた方が良さそうだ。いくら彼が少年だったとしても。

「私、少し負けず嫌いなところがあるのよ。だからあなただけに任せるのが少し悪いと思ったのよ。」

「どういう意味です?」

「あなたに全部任せるのは公平じゃないということよ。私の方が年上だし。」

ベスはそういうと腕を枕に横になった。ラウルはむっとして言った。

「僕が年下だから? 年齢には関係なく僕は近衛騎士に選ばれた。」

「ブルクミランは田舎の小国よ。何もかも変わっているの。私もそう。でも、ラウル。あなたのその話し方がいいわ。」

べスはもう目を閉じて、ぼんやりとした口調で答えた。

「こんな森の中でも、アルメニスの騎士に守ってもらって眠るなんて。ブルクミランの小さいお城で眠るよりよほど安心ね。」

「それが僕の仕事です。あたりまえじゃないか。」

ラウルは怒ったようにつぶやいた。ベスの返事はなかった。彼女はあっという間に眠りに落ちたのだろう。または、女性とまともな会話もできない自分を放っておくことにしたのか。ラウルはしばらく彼女の寝顔を見ていたが、やがてあきらめて夜空に目を向けた。

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『初めの物語』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。