インドの取締役会を軽く見ると大間違いです。前述の5項目を怠ると、災難は自分の身に降りかかるだけではなく、会社対会社の信用を傷つけると心得て、最初の準備は抜かりなく真剣にやるのが、唯一の方法です。

一部で見かける企業グループの中には、取締役の本質を理解していない企業があります。

すなわち合弁会社を作って、そこに取締役を派遣する以上、「その取締役は、その合弁会社の業務執行権と議決権を行使するために善管注意義務を発動し続けないといけない」という会社法の基礎概念がわかっていないように見受けられるのです。

「取締役」は、検察庁の検事、会計監査法人の会計監査人と同じです。検事は、起訴するか不起訴にするかにおいて、責任と権限を負います。会計監査人もまた、そのファームのパートナーがなんと言おうと、サインできないものにはサインしないのです。

企業が派遣する合弁会社の「取締役」も同じで、業務執行・議決権を背負っているわけですから、派遣元の人事考課担当者がなんと言おうと善管注意義務を発動しなければなりません。

言い換えれば、株主権にない事項を合弁会社に強要し、損失または法令違反をその合弁会社に生じさせる事由があれば、出身元を問わず、善管注意義務を発動して阻止すべきなのです。

言葉は悪いですが、いわゆるヒラメ人材しかいない会社では、そうした基本的な法順守が属人的判断でゆがめられ、取り返しのつかない事態を発生させることがあり、それはその企業グループの質の問題なのです。