上司の上司との付き合い方

直属の上司の、そのまた上にいる上司から気に入られてしまった、という経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。部下であるあなたが、上司である課長を飛び越えて、部長から、かわいがられるような場合です。

部下が若いうちはまだいいのですが、役職がつくようになると、上司は「近い将来、追い抜かれるのではないか」という嫉妬心に取りつかれます。「部長職の部下が、上司である事業部長を越えて、役員から気に入られる」レベルになると、地位が逆転する確率が高まり、嫉妬心は更に強くなってしまうものです。

そこまでいかなくても、「こいつ、俺のことをチクったりしないだろうな」など、やっかみを買うことになります。この感情は、大なり小なり誰しもが抱くもので、人間として無理からぬことでもあります。しかし、上司の立場が悪くなると、思わぬ保身に走って、とばっちりが部下に及ぶことも想定されます。

すでに、第1章で触れたように、人間の持つ「嫉妬心」は、かなり根深いものです。ところが、上司が、自分に対して嫉妬していることに気づかない場合もあります。特に、大ボスから高い評価を受けた時などは、有頂天になって舞い上がってしまい、直属の上司の立場を忘れてしまいます。

上司としても、自分の部下が高い評価を得ること自体は、上司の指導力が評価されていることでもあるので、必ずしも悲観する必要はないのですが、時と場合によっては、心穏やかではありません。更に、立場が上になるほど、「ひょっとすると、本当に追い抜かれてしまうのでは……」という焦りから、恐怖心が芽生えるようになります。

たとえ、直属の上司の上とのパイプができて、認められるようになったとしても、目立った行動や深入りは禁物です。適度な距離を保ちながら、上手に立ち回り、バランスを考慮した応対をすることが必要です。

せっかくうまくいっている上司との関係が悪くなっては、元も子もありません。ここはひとつ、冷静に状況を見つめ、上司の心情も察しながら、臨機応変に対応することになります(上司との相性が良くない時は、言うまでもありません)。

また、上司を越えて直訴したり、提案したりする「上司越え」も要注意です。どうしてもそうしなければならない状況になった時は、慎重な配慮が欠かせません。

たとえその行動が、部署にとって良い結果に結びついたとしても、頭越しにやられた直属の上司のメンツは、丸つぶれです。どんなに良好な関係を築いていたとしても、どんなに温厚な性格だろうと、何らかの形で、しこりは残ってしまうものです。

その場合は、上司にも「花を持たせる」工夫が必要となります。理想は、直属の上司経由なのは当然ですが、それがままならないのであれば、自己防衛策を講じなければなりません。例えば、何でもいいので、どこかに上司の絡んだ形跡を、さりげなく潜ませておくといった配慮などです(言うは易し、で実際はなかなか難しいのですが)。