S君は夜行バスで京都入りするため、朝7時にA家に電話してもらう約束だった。彼からの一報があったのは7時20分で、夜行バスが少々遅れたこともあったが、すでに最寄り駅まできているという。

慌てて仕度をし、今日は登山姿での京都徘徊となる。駅前で朝食を買い、通勤・通学の人々を眺めながら、高野川の土手でそれをほおばる。

空気は少し冷たいが、明るい陽射しには温もりがあふれ、高野川や周辺の景観にも何となくだが京都らしさを感じる。

後日A君と酒を飲みながら聞かされた話だが、賀茂川(高野川と合流した後、鴨川となる)も最近はゴミが目立ち、ガッカリだという。花火大会などの人出のあった後には、決まってゴミの山なのだそうだ。

叡山えいざん電車に乗り貴船口へ、今日はここから鞍馬を経由して大原まで歩く。駅から貴船川沿いに遡ると、以前テレビで観たような京都らしい料亭や宿が並んでいる。

S君に促され、せっかくだからと貴船神社に立ち寄り参拝して行くことにし、そのお陰で山本晋也氏(通称:山本監督)に偶然遭遇した。

貴船から鞍馬へと山道を辿り、鞍馬寺前の店で関西風のうどんをすする。店内ではしきりに関西弁が飛び交っている。鞍馬からは再び山道へと入るが、薬王坂を越えると間もなく舗装道となる。

今日の行程上にはピークと呼べるようなピークはないが、このルートは「東海自然歩道」であり、夜行バスで京都までやってきたS君の体調を考えたら、あまり高低差のない方が無難に思えた。

しかし、舗装道の割合が高く、それは足腰への負担が大きいので、かえって山へ登ってしまった方がよかったかもしれない。舗装道を歩き続けると、足裏は痛いし、足首やふくらはぎ、あるいはヒザに負担を感じる。

自分自身の体重、ザックの重量、それに着地時のショック、それが山道のようには吸収されず、そのまま自分の体にはね返ってくる。

長いこと歩いていると、腰までおかしくなってくる。