D医師の作成した死亡診断書、死亡証明書は、三月十二日に、H事務局長がC方に持参し、同人に手渡した。

以上の事実及び前記第一の一の項で認定した事実によれば、Aの手術は無事に終了し、術後の経過は良好であったのに看護師がAにヘパロックした直後、容態が急変して死亡し、主治医のD医師が死体を検案し、そして、看護師がヘパリンナトリウム生理食塩水と消毒液ヒビテングルコネート液を取り違えてAに注入したかもしれないと言っており、

死体の右腕には静脈に沿った赤い色素沈着があり、解剖所見も、死体には心筋梗塞等、病死で死因を説明するようなものはなく、被告人は、解剖を担当したL医師から90パーセント以上の確率で事故死であると思う旨の報告も受けていたことが認められ、

これら事実などにかんがみると、Aの血液検査の結果が出ていない段階においても、Aの死因が病死や自然死ではないことは明らかであり、そして、被告人及びD医師らは、これらの事実を認識していたのであるから、

Aの死因を病死として死亡診断書、死亡証明書を作成することは虚偽の文書を作成することになり、かつ、被告人らは虚偽であるとの認識を有していたものと認めるのが相当である。

また、被告人は、D医師が死因の記載については個人の判断ではなく、病院全体の判断によるべきことであると考えて相談に来たのに対し、両副院長、事務局長の病院幹部を集めて協議した結果、D医師に指示してAの死因を病死として死亡診断書、死亡証明書を作成させたものというべきであって、被告人に右各書面の作成権限のあるD医師と共謀しての虚偽有印公文書作成、同行使罪が成立すると認めるのが相当である。

弁護人の主張は失当である。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『死体検案と届出義務 ~医師法第21条問題のすべて~』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。