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インドへ出発

搭乗機は着陸態勢に入った。いよいよ美沙たち三家族は、インド デリーの地に降り立つことになった。

日本の地方の空港のような大きさの白亜の空港ビルが見えた。しかも蛇腹のゲートが飛行機のドアにつけられるようだ。「きちんとしている国じゃない」美沙がデリーの地で最初に発した言葉だった。

無事に着陸し、出口は開けられた。インド人の乗客たちがざわざわと降り立ったあと、最後まで残された三組の教員チームが、客室乗務員の丁寧な導きで飛行機を降りた。その降り口には二人の日本人が立っていて、「ようこそ、デリーへ、お待ちしていました」と迎えていた。

一人は日本の航空会社のデリー支店長であり、もう一方が在インド日本大使館の領事だった。

その丁重さに驚きつつ、教員家族はぞろぞろと彼らについて、入国審査に向かった。

立派な建物で、新しく綺麗だった。そのことでどれほどこの三家族がほっとしていたか他の人には想像できないであろう。よう子もホッとしていた。新築したばかりの空港であったことはデリー初対面の彼らにはかなりの幸運であったといえよう。

一年前この空港はどこか小さな異国の古びた駅舎のようで、初めて到着した人々を恐れおののかせたと、新参者は聞いている。せめて玄関で『ぎゃふん』と言わせまいとするその堂々とした佇まいは、美沙たちを大いに歓迎するように感じられた。空港は想像以上に綺麗で、白を基調とした壁も本当にまっ白い。

大きなエレベーターがあり、三家族全員が乗ることができた。一行と一緒に『ブ〜ン』と一匹の蚊が入ってきた。