入院の手続きを夫人がやっている間に、待ち合い室で土曜日の夜のことがぶり返された。

「ねえ、あんた。土曜日は、一緒に泊まってくれるんでしょ?」

「うーん、親には言ったんだけど。なんか心配してたな」

「ちゃんと理由、話したの?」

「もちろん、細かく説明したよ。今日、もう一度頼んでみるよ」

「私もお願いしようか?」

「そんなことしたら、よけい面倒になるよ」

そうこうしているうちに、夫人の入院後、初めての土曜日がきた。僕も何回か親に頼んで、何とか同宿の許可をもらえた。彼女と絶対あやまちを犯さないという条件で許された。

何か問題を起こせば、相手は未成年だから、警察沙汰になるだろう。面倒なことになることは間違いない。そのことを、僕の親は特に心配していたのだ。

土曜日の朝、同宿の許可を彩さんに伝えると、彼女は小躍りして喜んだ。彩さんは、毎日、母親のお見舞いに行っていた。着替えを持っていったり、忘れていた物を持参したり。もちろん、学校は休んでいた。

大塚夫人にも、僕が土曜日に同宿することを伝えた。夫人は、彩さんが家で独りになるのをとても心配していたので、僕の同宿には感謝していた。

土曜日、僕は夕飯を済ませてから大塚家に行って、彩さんの家事を手伝ってあげた。

「あんたが来てくれてほんと助かった。あんたが来てくれなかったら、病院に泊まろうと思ってたんだ。でもせっかくあんたが来たんだから、たまにはバイクに乗りたい!」