ドールハウスは、屋根と階段とお人形の手がこわれていました。修理屋さんは、どうしてこわれたのかは聞かず、ドールハウスをしばらくジーッと見つめます。

「どれどれ。なるほど。大丈夫! すぐに直るだろう」

そう言うと、修理屋さんはこわれものを女の子から受け取り、奥の小部屋へと入って行きました。女の子とおばあさんは、目の前の座り心地の良さそうなソファに座って待つことにします。

小部屋からは、コツコツコツウィーンウィーンペタペタコンコンという音がくり返し聞こえてきます。

その心地の良い音に女の子もおばあさんもウトウトし始めた頃、小部屋の扉がギィーとゆっくり開いて「よっこいしょ」と言いながら、ドールハウスをかかえた修理屋さんが出てきました。

「はいどうぞ。これでどうでしょうかな?」

と女の子に手渡します。女の子の表情がパァーッと明るくなりました。

おばあさんが言います。

「まあ! こんなにきれいにして下さるなんて! ありがとうございます。さてさて、お代はおいくらになりますかね?」

修理屋さんは、ニコニコとした笑顔の女の子を優しい目で見つめながら言います。

「お代? お代なんぞはいらんよ。この子の笑顔で十分さ。さぁ、暗くならんうちに丘を下りなさい。どうぞお気をつけてな」

次の日、太陽が店の真上にきた頃、誰かがやって来たようです。

トントン。

「はいはい。どうぞお入り下さいな」

ドアを開けたのは、大きなリュックを背おった男の子でした。

「一人で来たのかい? そんな大きなリュックで、がんばって登って来たなぁ〜」

男の子は、誇らし気にコクンとうなずいてから言います。

「こわれもの、たくさんめてたんだ! 全部ミニカーだよ!」

「おーそうかい。ミニカーが好きなんだな。ちょっと時間がかかるかも知れんから、ソファでゆっくりしておくといい」

修理屋さんは、大きなリュックを受け取ると小部屋へと入って行きました。男の子は、ソファにゆったりと座ってみます。ソファが疲れた体を包み込みます。抱っこされているようで、男の子はホッとして眠ってしまいました。

奥の部屋からは、トントンウィーンウィーンという音。どの位の時間が経ったのでしょうか……