第二部 教団 第二章 報告 七

二人になると村上は、「やあ、待たせてすまなかったな」と、ソファーにどっかりと腰をおろした。言葉は元気だが、疲れたところも感じられる。

「いいのかい」と風間は聞いた。

「また明日でもいいのだぜ」
「いや、明日のことは分からない。だから今日聞いておこう。明日になったら、これかもしれないからな」

村上は笑いながら、自分の首を切る真似をした。

「切腹でもおおせつかったの?」風間が冗談を言うと、村上は急に真顔になって、「立ち聞きでもしてたのかい」と応じた。

「いや、本当にもう少ししたら切腹しなければならないかもしれん。その時は、後を頼むよ……まあ冗談は抜きにしてだな、話はどこまで進んだのだっけな。そうか。この書類を読みかけていたのだな」

村上は再び書類に目を落とすと最後まで読んだ。

やがて村上は顔をあげた。

「君には失礼な言い方になるが、俺にはまだ信じられん。もしもこれが全部本当のことだとしたら、そのうち国中がひっくり返る」

今度は風間がびっくりする番だった。

「確かに驚くべきことだぜ、だが、国中がひっくり返るとはどういうことなんだ。君は秘書になってから、少し大げさになったのと違うか」
「いや、困ったことに本当だ。君ね、もしも戸隠仁聖が、君の言うように本当に佐藤大全と同一人物だとしたら、実はこれはとんでもないことなのだ」

村上は少し黙った。

「いや、君には本当のことを言っておこう。後で証人になってくれるかもしれないからな」

こうして村上は話し始めた。