第二部 教団 第二章 報告 七


この一年の政界は騒然としている。与党、民自党の派閥の領袖片山正秀への献金疑惑がZ新聞にスクープされて以来、民自党の面々は疑心暗鬼になって怯えているのである。

なぜそんなに怯えるのか。

それには相応の訳がある。片山正秀に献金して見返りを計ってもらったとされる正友商事という会社は、海外との貿易に携わる所謂商社であるとされるが、その実態がいくら調べてもよく分からない不透明な会社なのだ。

社長の正友という男は、スクープの前に海外に高飛びしてしまっていて、いまだに行方がわからない。役員というのは名前ばかりのが何人かいるが、彼らは途方にくれるだけだというのだから、お話にならない。ほとんど献金目的のための幽霊会社としか思えないのだ。

では、誰が何のために献金したのだろう。そして、なぜそんな情報が、三大新聞の一つであるZ新聞にいきなりスクープされたのだろう。

誰かリークしたやつがいるに違いない。俺も情報を集めていた。何しろうちの先生は、片山派の有力な若手議員だからね。

そのうち、普段から親しくしていたP新聞の記者から、変な情報を聞いた。P新聞にもこの献金事件については、リークがあったというのだ。誰からだろう。それが何と、正友本人からだというのだ。P新聞では変だと思ったが、少し調べてからニュースとして扱うには一寸まずいだろうということになったらしい。

そうすると、正友という人物が問題になる。この人物はリークして何の得があるのだろう。何か個人的な恨みでも生じたのだろうか。背後にはもっと何か別の組織があって、彼を利用したと見るのが普通だ。そこで、俺も正友という男について調べてみた。

すると、この男はある宗教に凝っていたことが分かった。華水教という仏教と神道を混ぜたような新興宗教だ。この宗教はかなり新しいものだが、このごろではよく名前を聞くようになった。かなりの信者がいる。公称八百万人だが、まあ実数はその半分ぐらいだろう。

宗教というのは、布教活動が大変だ。いきなり戸別訪問をしたり、街頭で宣伝したりしても、容易に人を引っ張れるものではない。特にこのごろはほとんどの人が無宗教に近いから、宗教といっただけでいかがわしい組織といったイメージをもつ人も多い。だから、一見宗教っぽくないものを間に用意して、科学的なイメージで信者を獲得していくものもある。

元信者というやつに接触してみたところ、面白いことが分かった。
 

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『百年後の武蔵野』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。