ヒップホップに導かれて渡ったアメリカで目にした、現実現代の「個」の在り方を問いかけるリアル・ストリート・エッセイを連載にてお届けします。

ハーレム・ルネサンス

マンハッタンのアップタウン行き110丁目で地下鉄を降りるとすぐに、ドラムの音が階段のところまで聞こえてきた。階段を上りきり外に出る。人だかりの向こうに、キッズから10代ぐらいまでの男女がドラムの激しいビートに合わせ踊っているのが見えた。

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凄まじい早さで肩や腕、腰をシェイクさせながらジャンプをしたり、力強く手足を高く振り上げたり。Harlem Week(ハーレム・ウィーク)。毎年夏、約1か月にわたり開催されるハーレムの恒例イベントである。

ここ110丁目では、“Harlem Renaissance Economic Development Corporation(ハーレム・ルネサンス経済開発協会イベント)”が8月半ば、3日間にわたって開催される。サウス・ハーレム(125丁目より南に位置する)地域発展のために設立されたHood主催のイベントである。今日はその第1日目だ。

子どもたちのダンス・パフォーマンスが終わり、ジャズ・コンサートが始まる。胸と尻の大きなその女性の腹から、太くて豊かな声が響き渡る。時折、とても繊細でやさしい歌声が心地よく耳に入ってくる。女性の声は、110丁目の空気にすっかり溶け込み、私たちの心をsmooth(なめらか)になでてくれるのだ。

休憩に入り、BGMにはMarvin Gaye(マーヴィン・ゲイ)の“What’s goin’ on(1971)”や“Sexual Healing(1982)”が流れる。人々は気持ちよさそうにその歌を口ずさみ、手を叩いたり、立ち上がって軽くステップを踏んだりする。