Marvin Gayeは、1970年代、数々のヒット曲や名曲を残した。ベトナム戦争や公害、差別・貧困といった社会問題を積極的に取り上げた歌詞や、それに対する苦悩や悲しみの赤裸々な表現が特徴的であった。しかし、1984年の4月1日、自宅で父親と口論になり、逆上した父親は彼に対して発砲。Marvinはそのまま帰らぬ人となった。

彼の声はやさしく、どこか哀愁が漂う。ハーレムのHoodを大きく包み込み、人々の心をそっと癒すのだ。

テントの下では20代前半ぐらいの男性3人と50歳前後と思われる女性がソウル・フードを作っている。甘いソースでからめた大きなチキンやレッド・ビーンズ(赤豆)入りのスープ。ここ一帯はソウル・フードの匂いに包まれ、それを求めて長い行列がすでにできている。

 

すぐ隣では、アフリカを思わせるアクセサリやハガキ、絵画、写真、本などが売られている。すべて手作りだ。一つひとつの商品は単なる売り物ではなく、作り手のHeart(心)とSoul(魂)がこもったArt(アート)である。

一つひとつのArtを丁寧に見ていると、ハーレムに漂う哀愁や人々の温かさ、そしてハーレムの強さが伝わってくるような気がした。ここハーレムでは、アフリカの伝統や文化、スピリット(精神)が、確かに受け継がれ、またそれが大切に守られている。

10代から30代ぐらいの若者が中心となり、積極的にこのイベントを支え、盛り上げる。“Harlem Renaissance Economic Development Corporation(ハーレム・ルネサンス経済開発協会イベント)”の歴史はまだ浅いが、Hoodにしっかりと根付き、これからまた何十年先も世代から世代へと受け継がれていくのだろうか。

それぞれの世代にそれぞれの役割がある。Hoodを良くしていこうという一人ひとりの願いが、さらにHoodの絆を強くしていくのだろう。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『HOOD 私たちの居場所 音と言葉の中にあるアイデンティティ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。