「隠しても駄目ですよエステさん。これは父の遺言状に添えられた、私宛の親展文書に書かれていたのですから。父の自筆の書状ですよ。ですから、全て話していただきませんと」
「遺言ですと!  エドワードが喋ってしまった?  そんな馬鹿な……。えっ、事実を……?  本当ですかな?  そう、そうですか……遺言でね……エドワードが約束を破ってしまったとは……。そ、それでは仕方がありませんな」

遺言状と聞いて、ついにコジモは観念してうなだれた。

「………」

エリザベスと宗像の二人は、黙ってじっと相手を睨み付けるだけだった。コジモは仕方なく話を続けざるを得なかった。

「確かに私はお父上のエドワードとはローマ大学文学部の同級生でね、かれこれ四十年以上にわたる親友の仲でしたよ。しかし、いまエリザベスさんが話されたことは二人だけの秘密だった。絶対に他言しないという固い約束ができていたのですがね。だが、あのように、エドワードが突然亡くなってしまった。遺言にともなって、その一部がこともあろうに明らかにされてしまったとは……。それにしても、ああ、仕方のないことですな……」