板橋と金田はコンビを組んで仕事をすることが多かった。仕事ばかりではない。二人は遊びも共通であった。仕事も遊びも板橋がリーダー役だ。

現場には課長クラスの事務机があった。木製の大きな机だ。某年の夏、ボーナスが出た直後に、板橋と金田は課長に呼ばれた。課長はボーナスの札束を机の上に出して言った。

「ボーナスのお札もな、こんなふうにお札が立てても倒れないくらいにしたいな」
「……」
「だがな、板橋は九州の五島列島からの出稼ぎだし、金田は新潟の燕から燕のように飛んで来たのだから、いつまで経ってもお札は立てられないだろうな」

板橋も金田も札束を見て、羨ましく思った。同時に、課長から馬鹿にされたように感じ、悔しい思いをした。

板橋と金田は、いい仕事をしたが、頻繁に会社を休んだ。3、4日間連続して休むこともあった。

休んで何をするか? 二人は中古車とも言えないようなポンコツの自動車を買って、その車を解体したり、修理して乗り回して遊んでいたのである。たとえば、三菱500、ニッサン・ブルーバード、トヨタ・パブリカ、トヨタ・カローラなどである。

乗用車だけではない。古いオートバイも修理していた。自動車を解体して、それを組み立てるためには、1日では困難である。

したがって、2、3日間連続して会社を休んでいたのである。カーレーサーとかオートバイのサーキットレースみたいに走りまくっていたので、府中辺りの道路は、どんな狭い道路であっても、板橋たちは知り尽くしていた。

ある休みの日である。板橋が金田にとんでもないことを持ちかけた。