かつて宇宙や世界は音から生まれたと考えられていました(“Music Therapy" by Juliette Alvin)。我々は母親の子宮という宇宙の中から地球に出てきました。

胎児は子宮という宇宙の中で心拍とともに流れる低音な血流のリズム・母親の呼吸とともに動く横隔膜のテンポ・そして母親の話しかける声や子守歌を聞きながら育ちました。だから、赤ちゃんは母親の左胸に抱かれて心音のリズムを聞きながらおしりをポンポンとテンポよくたたかれると安心して宇宙に戻り眠れるのです。さらにそこに母親の話しかける声や子守歌を聞けば安心するのです。

講演会でよく質問されるのは、「どんな音楽を聞かせればいいのでしょうか?」という質問です。私は答えます、「妊娠中に母親が聞いていた音楽がいいのでは」と。

なぜならば、妊娠中の心拍のリズムや呼吸のテンポと同じリズムやテンポが、抱っこしている赤ちゃんに伝わればいいのではないかと考えたからです。赤ちゃんは決して音楽や声を聞いているわけではありません。

小児科医は胎児から中学生までを主な担当領域とする医師です。「新生児からではないのですか?」と聞かれると、「いいえ、私は胎児主治医になったことがあります」と答えます。なぜならば妊婦さんの超音波検査で脳脊髄の先天奇形などがあると出生後は必ず小児神経科医が主治医になるので、生前から母親とコミュニケーションすることで生後の医療的なケアがうまくいくからです。

このように子どもと音楽は密接なつながりがあるのです。音から宇宙が生まれたのと同じように、我々は生前から母体内のリズムやテンポの音とともに育ち、生まれてきたのです。