人種・民族の差別

カントやヒュームの場合

哲学者カントは、その人種論において、同じ哲学者であるヒュームの「アフリカ黒人は、本性上、子供っぽさを越える如何なる感情も持っていない。その心の能力においても、白人と黒人の間には肌の色と同じほど本質的な差異がある」という主張に同調するなどをし、白人優位説を展開しています。これにより、カントは白人至上主義の父祖の一人とみなされています。(以上、フリー百科事典ウィキペディアから)

然るに、現在においてさえ、人種間の優劣を判定できる普遍妥当なチェックリストなど存在しません。

最先端の様々な分野の知識を駆使できる現在の環境に比べれば、人種間の優劣を考えるための資料などないに等しい当時にあって、カントもヒュームも自身で徹底研究したわけでもなく伝聞や当時の少なく幼い文献等により、黒人に対してそのような断定的認識を不用意にも披露していることは、特に両者が哲学者であることを考慮しますと、許されることではありません。

哲学者であれば、人種間優劣の存在というような命題を結論するためには、そのための知識と情報が必要にして十分かどうかを吟味してかからなければなりませんが、両者はそれを怠っています。

これは、現在においてさえ人種間に優劣が存在するという証拠は発見されてはいないということを以てその根拠とします。従って、少なくてもこの点に限れば、両者共に自身も子供っぽさを越える如何なる知性も持っておらぬ哲学者失格であった、と批判されても仕方がないと言わざるをえないことになります。

然るに、カントは現代の国際的な自由主義への多大な貢献者であり、ヒュームは奴隷制度に反対の立場の者であったことを考えますと、人種についての認識不足はあったものの、両者共に博愛主義者であったことは確かなようです。