縄文人ユヒトらの集落・イマイ村で生きていた林たち3人との再開を果たした盛江と川田。ここで初めて、3人が沼田たちに殺されかけ、身を潜めていたという事実を知る……。

殺し合っても貴重な労働資源が減るだけ。

「確かにそうだ。だが物事は慎重に運ばないと。笹見平で仲間割れが起こって殺し合いになったら最悪だ」

「そう」岸谷が口を挟んだ。「我々は仲間であり、同時に貴重な労働資源でもある。殺し合ったら畑や狩りを一緒にやる人手が減るんだぞ。大きな損失だ」

「ちぇ。何が『大きな損失だ』だ? 人が心配してるのに、お前さんたちは後先をちゃんと考えて、立派なこったね。けど、これからどうするんだ? 今日これから一緒に帰るか?」

「そうしたいのはやまやまだけど」林は岩崎と岸谷を見た。「この二人の足がまだ治っていない。完治してからにしたい」

「ここからの道も、そこそこ険しいからな」盛江は添え木をされて布でぐるぐる巻かれた二人の足を見た。「で、今日のことは戻ってみんなに伝えていいのか?」

「待ってくれ」岩崎が制した。「早坂は中学生の支持を得ている。盛江が笹見平に帰って真実を伝えても、早坂と沼田が口車で押さえこむだろう。お前のことなんか『人の心を惑わす奴』『かわいそうに幻でも見たんだろ』とか言って、うまく片付けてしまうに違いない――そもそも盛江は中学生から信頼されていないからな。言葉づかいが乱暴で、避けられてるだろ?」

「そのとおりです」川田は盛江を見た。

「じゃあどうすりゃいいんだよ」盛江は口を尖らせた。