そんな時、おじちゃんとおばちゃんと一緒だったころのことを思い浮かべるんだ。おじちゃんのへんてこりんな歌も聴きたくなった。

おばちゃんのとびっきり明るい声と笑顔もなつかしくなった。毎日そんな夜をくり返している。こんな気持ちになったのは生まれて初めてだ。

今日も知らない町をさまよった。あっちこっちでゴミの山が高くなっていて、においが鼻についた。

地震が起きた時にはあんなに寒かったのに、歩くともう肉球が熱く感じる季節に変わっていた。いつも通っている瓦礫の街並みとちがう方角を歩いてみた。

道路が切れ切れになっていたり、畑に段差ができていたり。ほとんどの屋根にブルーシートがかぶせてあった。つぶれたままの家もいっぱいある。山のほうへ向かって歩いていくと、丘のとちゅうから、かすかに甘いにおいがしてきた。

「あっ、ぼくの大好きなメロンパンのにおいだ!」

そのにおいを追っていくと、見たことのない建物の前に着いた。中へ入ってみた。なつかしい歌声が聞こえてきた。

“西原村のパン屋”は 世界一たい
ふたりの手づくりで できとるけん
“西原村のパン屋”は ロマン入りばい
楽しゅうて パンば つくっとるけん
パン パン パン ハイできたばい

 
 
※本記事は、2020年10月刊行の書籍『愛ラブ猫 I Love Neko』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。