猫カフェをやめて、看板を“喫茶 猫に小判”に変えた。

「そういえば、子供たちは“何か芸はできるの”って、いつも聞かれるじゃない? 芸を見せないといけないのかしら」

話しながら、おとんとおかんの、これから進むべき道が決まっていった。

「もう猫カフェ、やめましょうよ」
「うん、そうだな。でもな、やめるとなると生活が大変になるぞ」
「でも、これまで少し貯金もさせてもらったし……」
「まあいいか」

いつものまあいいかで、うなずきあった。それから話は早かった。おとんもおかんも、猫カフェをキッパリやめて、看板を“喫茶 猫に小判”に変えた。

 

店には猫が1匹も顔を出さない。ぼくと5匹の仲間とゲンキが洋服を着て歩きまわる出番はなくなった。

変わったのはそれだけではない。壁に大きなホワイトボードをかけ、いろんな猫の写真をはって、里親の募集をはじめたのだ。それに、おとんはホームページをつくって、ワンちゃんとネコちゃんの里親さがしをはじめた。

もちろん、裏の居間は、ぼくとゲンキと5匹の猫たちで住み分けている。店が閉まると、みんな居間から店に移って、好きなように暴れまわるんだ。キャットタワーで遊んでも、上の猫通路を歩いても、おとんとおかん以外には、だれも見ていない。