しかし、精一杯振り絞って出した声も、木々のなかに虚しく吸い込まれてしまう。それでも「ショー! ショー! ショー!」と絶叫し続ける。

もう、これまでかと思った途端目を醒ます。びっしょりと寝汗をかいている。

また、ショーの夢を見た。最近ショーの夢をよく見る。それもショーがまだ四、五歳の頃のことだ。

部屋の中を見回すが誰も居ない。真っ暗だ。いつも同じ夢を見て、同じところで目を醒ますのだ。

昨年まで私はショーと妻と一緒に同じ部屋で寝ていたが今は独り、誰も居ない。私独りきりである。

ショーというのは長男の名前だ。正確には小見山翔という。重度の知的障害があり、自閉的傾向が強い。

障害者手帳は第一種知的障害。障害程度丸Aの二。言葉は未だ出ない。もう一生言葉はないだろう。

簡単な身振り手振りでコミュニケーションを図る。そんなショーも今年二十歳、成人式を迎える。現在、ショーは元妻が経営しているグループホームで暮らし、やはり元妻が経営している障害者用の作業所に通っている。