頑張らなくちゃ

「専攻医1年目の山川悠です。石山病院で2年間の初期研修を終え、外科を学ぶために東国(ごとうく)病院に来ました。よろしくお願いします」

人前で話すのが苦手な僕は、最低限の挨拶をなんとか済ませた。

「同じく専攻医1年目の東です。私は手術、抗がん剤など癌の治療全般に興味があります。最先端の医療を学びたいと思い、東国病院での研修を希望しました。ここで研修できることを光栄に思います。至らぬこともあるかと思いますが、全力でやってまいりますのでよろしくお願いします」

一方で、同期の東さんは堂々としている。東さんは僕も聞いたことのある関西の有名病院で初期研修を過ごした超エリートだった。最初の挨拶だけでとんでもなく差があるように感じてしまう。

この日は、病院のオリエンテーションがあり、カルテの使い方や施設案内が行われた。オリエンテーションには僕と同じように今年度から専攻医として研修に来た十数人の同期が集まった。

「おれは泌尿器科の専攻医なんだ。よろしく」
「僕は消化器外科。こちらこそよろしく」

泌尿器科の早坂はその1人で、高校時代に野球部に所属していたという共通点があり、そのおかげかどうかは分からないが、僕たちはすぐに打ち解けられた。

「僕、東京に出てきたばかりで知り合いもいないんだ。だから仲良くなれそうな同期がいて心強いよ」