エステ氏はそう確認すると、額装用の作業台の奥に立てかけられた衝立の陰に消えた。宗像は今ごろ何を言うのかと思いながら、左側の壁に架かっている夥しい種類の額縁枠見本の中に、金縁の鏡が掛かっているのに気がついた。

何気なく鏡を覗き込むと、ちょうど良い具合にエステ氏の後ろ姿が斜めに映っていた。額の見本を見る振りをして鏡を見つめると、衝立の横に床置きの黒い耐火キャビネットが据え付けられているのが見えていた。

エステ氏は二つあるダイヤルの一つに手をかけて回そうとしていた。左が所定の位置で止められると、もう一方のダイヤルに指がかかり、同じように回した。キャビネットの上にはうず高く書籍が積まれ、その左に小さな流し台が見えている。そこには小振りなエスプレッソ・マシンと、ワインの瓶が二本並べられていた。

平らな傘付の照明器具が、黄色い光を放ちながら天井から吊り下がり、狭くてほの暗い場所で操作をするエステ氏の手元を照らしていた。セッティングが完了したのだろうか、両手が左右のハンドルに掛かり、外側に捻ると同時に、扉が開いて灯りが外に漏れた。キャビネットの内部には照明が仕込まれているようだ。

エステ氏は内部の引き出しに手を掛けると手前に引いた。差し入れられた手に摘まれて出てきたのは、小さな四角い紙切れのようなものだった。再びキャビネットが元の位置に閉められ、二つCのダイヤルがランダムに回されるのを見届けるやいなや、宗像は身体を戻すと入り口近くに架けられた絵を見ている振りをした。

「いや、お待たせしました」

二点のリトグラフが丸い筒の中に重ねて納められ、例のキャビネットから取り出された四角い紙切れが手渡された。それは薄汚れた黄色い洋封筒だった。宗像はクレジット・カードでサインをしながら尋ねた。

「これは何ですか?」