第1章 ヒューマンエラーはなぜ起こる

6、この章のまとめ

ここまでで、ヒューマンエラーは人の脳の中で起こる間違いであるということと、その間違いを引き起こす要因として、m-SHELモデルが示す各要素と中心の人との関係が影響しているということを述べました。

具体的には、人とこのm-SHELモデルにおける各要素との不整合から生まれるマイナスの要因が、人の脳の中で行われる処理の誤動作(間違い)を引き起こしているのです。

そのようにして発生したヒューマンエラーは、ハインリッヒの山で示すところのヒヤリハットを含む事故につながっています。さらに、仕事の場だけではなく人々が活動する全ての場所で起こっています。

人の脳がダメージを受けた結果であることを考えると、私達が行うべきヒューマンエラー防止対策は、単なる職場における“設備”や“ルール”の改善で済むような単純な問題ではないということを認識すべきです。

それでは、こんなヒューマンエラーを防止するための具体的な対策について、どのように行えば良いのでしょうか。次にそのことを考えたいところですが、対策を検討するために、1つどうしても知っておかなければならないことがあります。

それは“リスクテイキング行動(不安全行動)”と呼ばれるものです。

第2章では、この“リスクテイキング行動”について、どのようなものなのか少しお話をしておきたいと思います。そして、“ヒューマンエラー”と“リスクテイキング行動”との違いを充分に理解した上で、第3章のヒューマンエラー防止の対策に話を進めます。