第2章 リスクテイキング行動(不安全行動)

1、ヒューマンエラーとリスクテイキング行動の違い

『社内調査問題見抜けず』これは、ある日の新聞に掲載された不正問題に関する記事の見出しです。今、企業における検査不正問題が、テレビや新聞で頻繁に報じられています。

これらの報道の中では、「検査結果が規格を満たしていなかったが、その製品を分解し改善するために5時間程度時間にロスが生じるため、データを改ざんし、そのまま出荷をした」、「この会社では、検査員が1人で出荷判定を行っており、以前から改ざんはあった」、「(生産)ラインの流れが速く、確認項目を全て確認するには時間が足りないので……」、「(生産)ラインが詰まってしまうと上司からせかされる」などなど、不正問題を扱った記事には、様々な現場のコトバが記載されています。

このように、社会で発生する問題には、安全違反や、コンプライアンス違反など、状況は違いますが、そこには“人が意図的に、社会ルールから逸脱した行いをする”という共通点があります。そしてこの行動のことを“リスクテイキング行動”や“不安全行動”などと呼んでいます。

それでは、“リスクテイキング行動”と先に取り上げた“ヒューマンエラー”とでは、どこが違うのでしょうか。ヒューマンエラーはうっかりと行ってしまうものです。第1章の最初に定義したように、“事故やトラブルのキッカケになる人間の間違い”すなわち、本人の意図した結果とは違う行動・結果を招くものです。