3月13日(日)

五代目中村雀右衛門襲名披露

歌舞伎座の3月は、中村芝雀改め『五代目中村雀右衛門襲名披露』であった。

今日は昼の部を観た。

私が舞台に興味を持ち始めたのは5年ほど前である。勤務先が、劇団四季「春」「秋」「自由劇場」へ歩いて行ける場所にあるので、四季の公演は一通り観た。四季によって私は舞台の楽しさを開眼してもらったと思っ ている。

別なご縁から、「オペラシアターこんにゃく座」を知り、好きになった。

平成25年4月に新しい歌舞伎座のこけら落とし興行が始まり、それが私の歌舞伎へのめり込むきっかけになった。最初はよく分からなかったが、徐々に、観ることになれていった。

私がこの歳になって分かったのは、歌舞伎は「女方」が幹である、ということである。

私は漠然と女方を演る役者を、その気のある人と思っていた。しかし1年もせぬうちに、「女方」という歌舞伎役者の美しさ、凄さを理解した。男が裸婦を描くからといって、その画家を変に思う者はいない。役者は自分の体を筆と絵の具にして、舞台というカンバスに女を描いているのである。

観客はその描かれた女を観る。ただ、絵は残るが、舞台は、幕が下りれば消える。残るのは観た者の記憶の中のみである。

中村芝雀という役者は、私の感覚では「地味」である。

しかし印象としては、私が観た舞台にいつも出ているような気さえする。品良く折り目正しい芸が、信頼されているのだろう。

それは今回の「五代目中村雀右衛門襲名披露興行」に参加する役者たちの名を見ても分かる。歌舞伎界の重鎮は、ほとんどすべてが名を連ねている。オールスター勢揃いである。