第4章 合目的的なる世界

第2項 合目的の厳しい世界

2 アマチュアのプロ殺し

ところで、利用者によるレビューの公開と通報システムによる監視的是正は、着々とシステムの趣旨に沿わない不正者を排除し、利用者の安心を担保し、販売サイトや新しいサービス提供の安全面における管理の実績を積み重ねてきた。

商品の販売に限定されず、サービスの提供をするシステムが次々と現れ、資格を持つプロ(職業人)や、時に数年にも渡る厳しい複数の有料の許認可を経て認証された主体にサービス提供者を限定しなくとも(独占させなくても)、サイドビジネス的アマチュアや、面接もなくサイト上の極めて簡易な登録を済ませたに過ぎない者が、即座に充分に結果を出す。

一般公募のオーディション経由の女子で構成されるアイドルグループが猛威を振るうように、無料で飲食をする女子の集う場所に男がキャバクラよりは少し安いそこそこのセット料金を払って殺到するように、“アマチュアのプロ殺し”全盛の時代でもある。アマチュア(不特定多数)を使いやすくなったのは、人を分子化した結果、人の管理が容易になったことが大きい。

人もまた、マニュアルに馴(な)れた。サービスの提供は、認証も程ほどに、見知らぬサービス提供者の極めて個人的な空間にサービス利用者が入る事になる、自動車による移動や宿泊施設の提供などにまで及ぶに至った。

日々伝えられる、教職の不祥事や、政治家のスキャンダラスや、老舗大手企業のデータ改ざん等と照らし合わせると、人間を、悪事を働く危険性も充分に認めながら利益を産み出す主体として用いるとき、外からはその人間を正しく教育し内からは自ら職業的使命感・倫理感を持ってくれるであろうことを期待するよりは、“利用者参加型・縦横監視的管理”の方が遥かに容易で統計的にも有効であることがデータとして立証され、短期とはいえ歴史的に認証された。

一般ユーザー的感覚に於いても、参加機会の平等、自由な参加・批評を許されることに伴う当事者意識的充実も相まって、広く支持されているようだ。とすれば今後は、仕事、というか利益を産み出す行為は、多くがこの形式に沿って組み換えられて行くだろう。

言うまでもなく、一義的な目的のもとに成果を数値化し報酬化するという事は、“皿洗い十年の下積み”とか、駅近に店舗を構える資金を持つものだけが商売を優位に行える、といった様な旧態依然の序列を解体し、能力のある者に直(す)ぐに競争機会を与えるという公平性、人材の早期かつ広範な活用の観点から非常に善い面がある。

反面、労働者として標準的程度の惰性に裏打ちされてきた、旧来のやり方に勤勉に倣(なら)うという、旧くは“味よしの瓜売り”から最近は“昭和の正社員”に到るまで許されてきた穏当な生き方、仕事の在り方は、許されなくなる。

※本記事は、2018年12月刊行の書籍『人間を見つめる希望のAI論』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。