はじめに

肩こりの治療なんて簡単です。

「ほんとかいな?」って思うでしょ?

診察に来た患者を、その場ですぐに治すという意味。自分で言うのもなんだが、私の治療は痛い。

特に腱鞘炎(けんしょうえん )の治療は「ブチブチ、ボキッ」とやる。患者から叩かれ、ののしられることもあるが、患者のためやけんね。「痛いでしょ」なんて笑いながら続ける。

そのちょっとの痛みを乗り越えれば、ケロッとして帰っていきますね、「あれ? 治った」って。

私のクリニックで一番成果を上げているのが、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療。そもそも骨粗鬆症の治療で「カルシウムを摂(と)れ」「日光に当たれ」「運動しろ」なんていうのは何の意味もない。

首から肩から手のしびれや痛みも、長い間、神経の圧迫が原因とされてきたが、それだって間違いだ。圧迫じゃなく、肩が下がることなどで筋肉や神経などが引っ張られる、「けん引」が主因だ。

これが、私が大学病院時代に導き出した結論。他の医者や学会ではなかなか理解されなかったが、最近ようやく認められてきたような感じがしている。

そもそも整形は、頸肩腕(けいけんわん)症候群※ をどうとらえるかによって治療が変わる。私は人類の重力不適応(未進化)によって生じた全身性疾患の一つと考え、局所だけでなく全身を治す必要があると考え、治療している。

地球上の生き物は、重力に逆らいながら進化してきた。

その中でも人間という生き物は、進化の過程で、急速に二足歩行に移行したため進化が追いつかず、 今の体や骨の仕組みになってしまった。痛みの原因は人類の進化の中に隠されている。

そして、肩こりや腰痛、しびれなど、整形疾患の根っこは姿勢にある。

この本を読んで、少しでも姿勢に対する興味を持ってもらい、いい姿勢とは何かを学んでほしい。長年治療に通っても治らない、年だから仕方ないといってあきらめちゃいけん。

姿勢を良くすれば、あきらめていた痛みだって取れるかもしれないんだから!

[図1]頸肩腕症候群の腕神経叢

【頸肩腕症候群】(けいけんわんしょうこうぐん)

人類が、二足歩行に対して十分に進化していないことによって起こる「頸(くび)」、「肩」、「腰」、「膝(ひざ)」、「足部」の重力不適応疾患の一部として、脊柱彎曲(せきちゅうわんきょく)状態の悪化や肩甲帯(けんこうたい)の下垂などにより発症。

頸・肩や腰などに単独で発症する疾患ではなく、他の部位の疾患とリンクしながら症状の発現と変動を示す。患者の多くは幼少期から姿勢が悪く、頸椎(けいつい)の前傾、胸椎(きょうつい)の後彎(こうわん)、腰椎(ようつい)の前彎(ぜんわん)が増強しており、側彎(そくわん)状態も合併している。

そのため、就寝時は側臥(そくがい)位(横向きで寝ること)や腹臥(ふくがい)位(うつ伏せで寝ること)が多く、仰臥(ぎょうがい)位(上を向いて寝ること)では長く寝ることが困難である。

局所の病態として、主なものは、頸椎の前傾と肩甲帯の下垂などによって生じてくる、

  1. 肩甲帯周囲筋のけん引過伸展による肩こり・頸部痛・筋緊張性頭痛
  2. 腕わんしんけいそう神経叢へのけん引による上腕のしびれ・疼痛(とうつう)・脱力および星状神経節(せいじょうしんけいつ)での交感神経機能障害による気分不良・食欲不振・微熱・上半身の血管拡張・視力調節障害
  3. 鎖骨の水平化に伴う胸鎖関節痛と前胸部痛
  4. 痛み等の持続によって引き起こされる疼痛性うつ状態、

などが認められる。幼少期に訴えることは少ないが、さらに詳しく診ると、これらの所見を示さない子どもを見たことがない。つまり、全ての人間が多かれ少なかれ、幼少期から頸肩腕症候群や腰痛症など、重力不適応疾患のリスクを背負って生きているのである。

※本記事は、2019年10月刊行の書籍『治療の痛みは喜びの涙 ある整形外科医の言いたい放題』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。