第五章 姿勢を正す

「ハンガー」じゃなくて「衣紋掛け」

肩こりを即効で治す方法というのがある。背筋を伸ばして、肩を上げて、胸を張れば、これで終わりだ。要するに、たいていの人は「ハンガー」に服を掛けた格好で生活をしている。「衣紋掛(えもんかけ)」に服を掛けた状態にならないといかんのです。

衣紋掛けというのは、衣類の袖に短い棒を通し、その棒を紐(ひも)で吊(つ)るして干す道具。特に、着物などの和服用に用いられることが多い。最近は馴染みのない言葉だが、衣紋掛けは真横でピッと服を載せたイメージ。ハンガーは左右の肩が下がった状態で、重力で下に引っ張られている。

姿勢を保持するためには背筋と腹筋がいる。ここでいう背筋と腹筋というのは、間違っても筋トレで身につく筋肉ではない。一般的に、筋トレというのは体を曲げて鍛えるものなので、意味が違う。体幹は姿勢を保持するものなので、日ごろからの意識が必要だ。

人間の進化の過程で「もう少し意識せずに、良い姿勢が取れる体に進化していたらよかったのに」と思うが、いかんせん今の人類は、意識した分しか保持できない体にできている。女優さんがだんだんきれいになると言われるのは、人に見られているという意識が働いているから。女優さんの姿勢は理想的だ。頭が体の真上に乗っている。力学的にいうと、首回りの筋肉に不要な力を入れず、背筋と腹筋で姿勢を保持している。

[図1]衣紋掛けとハンガーの違い