そして、公園にはとげだらけの木の実があったのを覚えています。外側のとげに割れ目があり、中から固い実が出てきます。主人はそれを拾い集めて家に持ち帰っていました。

奥さんはそれを茹でて、皮を剥いて食べていました。少しもらって食ったけど、美味くなかった。贅沢は言っていられないから、それも探そうと考えました。だけど固い皮をそのまま食うのかと心配にはなりました。

しばらく森をさ迷い歩くと、甘い匂いがしてきました。これは柿だろうと思い、急いでその木に近付きますが、何かが近くにいる気配がします。

何なのかは分かりません。

「ははん、カラスかな。カラスは大丈夫だ」

 

少し近付くと、今度は、藪(やぶ)からごそごそと大きな生き物がこちらを窺(うかが)っています。

その生き物は相当興奮しているようです。

「なんだ! 大型の犬か、それとも牛か。それ以外の大きな生き物は都会で見たことがないから分からない」と柴犬さんは怖くなって後退します。

すると、突然大きな体の生き物が突進して来ました。怖くなって柴犬さんは逃げようとしましたが、腰が抜けて動けなくなり、地面に伏してしまいました。

その生き物は近付いてきて言いました。

「なんだ、お前は。見慣れない犬だな。人間も一緒にいるのだろ! どこだ。きっと

おいらを撃ち殺すつもりだろ! お前は人間の使い走りだろ。さっさと消え失せろ!」と怒鳴りました。

柴犬さんは何が何だか分からず、ただ地面に伏しています。しかし、何かを言わないと殺されます。すかさず言いました。

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