6.サウザンプトングループは、胎盤重量と出生体重、その後の高血圧、心疾患の相関について述べている。胎盤重量に影響を与えるのは、母体の栄養不良による貧血だとしている一方、その他の因子として、母体の糖尿病、喫煙、年齢、肥満などがあるが、これらについては検討していない。

Editorialsの執筆者は、かなり詳細に、バーカー仮説の問題点をついています。5はおそらく、オランダ飢餓のデータに関連付けているのでしょう。

ルーカスの栄養プログラミング説│nutritional programming

アラン・ルーカス(Alan Lucas)は、イギリスの著名な栄養学者で、1980年代から、乳児期の栄養が将来の病気と知的発達に影響を与えるとして多くの論文を発表しています。彼はこれを「栄養プログラミング」と名付けています。

プログラミングとは、発達の感受性期に起こった出来事がインプットされ、それが生涯にわたって、その個体の健康と病気に関与するというものです。このことは、すでに、動物実験(多くはラットで、ごく一部霊長類のバブーンなど)で証明されており、動物界に普遍的な出来事であると、ルーカスは述べています(注4

歴史的には、19世紀末に、鳥類のインプリンティング(刻印づけ)が、プログラミングと同じ意味を持つとして知られています(Spalding DA, 1873.イギリスの動物学者)。

20世紀になって、コンラート・ローレンツ(Konrad Lorenz)はハイイロガンのインプリンティングの研究で、ノーベル医学生理学賞を受賞しました(1972年)。人工ふ化したハイイロガンの雛は、生まれた直後の感受性期に見たローレンツを母親と認識して、列を作って彼を追いかける写真が有名です。

1962年にラットで証明されて以来、数多くの動物実験で、栄養プログラミングが証明されました。すなわち、胎児期や乳児期の栄養が、代謝、成長、神経発達、高血圧、糖尿病、動脈硬化、肥満など、生涯にわたって影響を与えることが示されたのです。


(注1 Paneth N. et al. Editorials. Early origin of coronary heart disease(the “Barker hypothesis”) BMJ 1995; 310: 411-412

(注2 Strachan DP, et al. Mortality from cardiovascular disease amonginterregional migrants in England and Wales. BMJ 1995; 310: 423-427.

(注3 Christensen K. et al. Mortality among twins after age 6: fetal originshypothesis versus twin method. BMJ 1995; 310: 432-436.

(注4 Lucas A. Programming by early nutrition: An experimental approach.J Nutr 1998; 128 (suppl 2): 401S-406S

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